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中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、絵、音楽、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。


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詩 122

7月15~22日に書いた三作。


「孤独ゆえに」

景色はいつでも重なりあう
本当に一体になることなどできない
すべてが変換されずにはいられない
世界のなかで 人びとのなかで わたしたちは孤独だ

草木たち 菌たち 動物たち それら他のものたちのなかで
わたしたちは さまざまな色の混じるところを進む
こんなにも うれしい(かなしい)のはなぜ? 愛おしいのはなぜ?
生と死が なまなましく匂い 甘やかで ほろ苦い味がする
ああ 樹々のうえを鳥の群れが流れる
それらは枝葉に阻まれ 見えなくなる
それでも 確かにいるのだ!
声しか聴こえない虫たち 香りしかわからない花やきのこたち 声も香りもないものたち
風がふき 森がゆれ 幾層にもなる 光と影のまだら
もちきれないほど多くの感覚が 思考が 世界を織りあげる この交響

わたしたちは絶対の他者だ
お互いに 大きな地のうえに 広い空のもとに立つ
心臓が別々にうつ
それらがまるで溶けあうように…


※阻(はば)まれ 



「  」

あなたがほどけていく
あなたの姿 声 時が
わたしもほどけていき
あなたと泣き 笑う
それは透明な温かさ

あなたとわたしの人生の血管
繊細な赤い樹々のようなそれらが
花ばなを散らすように発火して 灯る
体と心が綯い交ぜになって ふれあうときに
流れた そして 流れている血と涙が全て 明滅して

これは何? これはこれ
 あれは? あれはあれ
そうでしかなくて 存在そのものの果てしなさを感じながら
命が 神のような無とともに踊る


※綯い交ぜ(ないまぜ)



「眩暈に溶けながらも目を覚まして」

萎れながら 色あせながら 色づきながら 枯れていく花ばな
その美しさを何と言おう? 生と同時に死でもある 儚く鮮やかなもの
雨に濡れた花冠たち 舞い散って 降り積もる花びらたち
わたしはそれらの光と影を呼吸する

胸をしめつける想いがある それはどのようなもの?
溢れ返って破裂しそうだ 胸が内へも外へも圧迫されて
流れこんできたのだ 存在の底知れぬ真実に圧倒されて
わたしはことばを失った そのほんの一部を見つめただけで

こんなにも満たされているのに こんなにも空しいのはなぜ?
空しさに駆りたてられ 歓喜と痛苦とともに進んできた
星ぼしを眺めながら ただ それをそれとして見つめること 
それとともに 何度も何度も 異なる星座を結びなおすこと

終わりはなく 道だけがある
走っては立ちどまりながら 傾きながら 逆さまになりながら
無限の道と そこから見える景色とを輝かせて!
開いた傷のなかにも 花ばなや宇宙の数々がある それぞれにみんな違う……


※眩暈(めまい)

# by ototogengo | 2019-07-22 20:57 |

詩 121

6月30日~7月5日に書いた三作。


「薄闇のなかで」

雨 何度も弱くなり 強くなって
雫たちが歌うときに 光るときに
あちこちで そちこちで
行きかう風たちが 植物たち 虫たちをゆらして
そして 声が それぞれの傘のなかで響く
石たちが漂わせる香り
それは水と空気と わたしたちと……とによってつくられる
この懐かしく 豊かな香りは

ヒトのように かつヒトでないもののように
わたしたちも形と音と匂いとで語らうだろう
ことばにはよらずに
すると 確かに触れあうのだ

希望にも絶望にも寄りかかることなく
あなたとともにいられる幸い
それがあるというだけで あったというだけで
奇跡を共有したのだ
それと気づきさえすれば 奇跡は決して絶えないだろう

虹はどこにでもある
あなたがあなた自身を傾けるだけで ほら 



「再生」

愛が幻だとしても この痛みは本当だ
あなたのことはわからない
わたしのことはわからない

痛みだけで愛は測れない そう簡単ではない
あなたが簡単ではないように
わたしが簡単ではないように

独りきりで居つづける軽さに耐えられなかったのか
そして この重みに苦しむのか
これは関係の重み 運動の重み

それは錨 陸に繋ぎとめるはずのものだった
だが それを繋ぐ場所はなく 海はあまりにも深かった
重みとともに沈んでいき 暗い透明に浸されていく

溺れながら光れ ゆらめきを集めて結晶させ 惹かれ 引かれ
て 痛みの底で歌う 煌めく星ぼしを放て それは魚たちの鱗を奏
で 貝たちの 水母たちの 海藻たちの 体を 夢を 灯して 艶やかに死ぬ!


※錨(いかり)、艶(あで)やか 



「紅い絵、あるいは物語」

わたしたちは死んでいく
さらに 比べようもないほど夥(おびただ)しく 死んでいく声たち
それらを集めて銀河に変えたなら
幾層もの軌道をたどる星たちが波うつ
痛いほどの眩(まばゆ)さのなかで美を手探りする
ああ 噴きだす紅い液体よ
景色を映す血溜まりになって

わたしは見つめたものを傷つけてきた
それを裁くように 自分自身も裁いてきたか?
きっと そうではなかった
許すためには 立ちどまってはならない
同時に できるだけ多くの見つめ方をすること
源を 行く先を 目に見えないものたちをも 見つめて

ああ 燃えるような夕焼けがなぜ これほどまでに美しい?
すべての理由を知ることはできないだろう
それでも 一つ また一つと 丁寧に触れていけば

# by ototogengo | 2019-07-22 20:52 |

詩 120

6月16~22日に書いた三作。


「これは?」

名前を呼んで 読んで
 声は内からも外からも溢れる
これは愛?
それぞれのリズムで明滅する 夥しい光の粒たち
星がその色によって歴史や構成を語るように
あなたの瞳が あなたの顔が 光の移ろいによって語る

…体に触れて 振れて
それは内からも外からも集める
これは愛?
かりそめのパズルを壊滅する 神々しい暴力の波

わたしたちは命を歌う
他の命たちを殺し 別の命たちを生む
これは罪?
愚かさに縛られ 解き放たれている わたしたち
できるだけ賢明に 愚かさを罰しつつ 踊る
のっぴきならぬ贈り物として 合奏を連ねよ
色とりどりの火花を咲かせる 不協和をまじえて



「あいたい」

今こそ本当の孤独を身につけなければならない
その服が肉体のなかに沈みこむように
布の切れ端 貝製の綺麗な円ボタン
それらさえも内臓に埋まるまで

体のなかを天の川が流れる!
家のそとは雨 その音は屋根を貫き
天の川をも貫いて 星ぼしのあいだの波紋たちが
それらの配置を それらの軌道を変えて 光は乱舞する

あなたは一緒にいても あなたのままでいてください もっと
あなたになってください わたしもあなたに倣おう
波が寄せては返し 風が荒れ狂うからこそ
わたしたちはますます独りで立つ
雷(いかづち)によって触れあいながら

そうだ



「みずみ」

幻影を愛しながら流されつづける わたしたち
誰かと共にいるようでありながら 独りきりで
あなたは今も元気ですか?
梔子(くちなし)の花が香る その香りをすぐに忘れるように 何もかもが失われていく
夢のように 何百何千の蝶が飛びかう
その翅(はね)や花の数々が光る ほの白い空間のなかで

存在するのは眠りと目覚めのあわいばかり
いつも違うということだけが いつも同じ
雨よ こんにちは
降りしきる透明たちが黒いまだらを増やしていく
雫たち それぞれに映る世界はすべて違う
わたしたちの瞳によって
…………の運命によって
ますます違うようになって

# by ototogengo | 2019-06-24 22:47 |

詩 119

4月20~27日に書いた三作。


「種(しゅ)のエデン」

気化した真珠が螺旋となって あなたを取り巻いた
その輝き その多彩
あなたはうっとりとして 目を閉じている
その螺旋が二重となり 四重となり 囁く
あなたは花ひらく そのとき 雫が跳ね 震えた
その表面と内面に 天地が雲のように流れる

金の線たち
光りながら 澄んだ音をたてながら 爆ぜて
花びらは散る はらり ひらり
まるい木の実たちが飛びたつ 軌道に乗って 模様を描いて
宇宙は膨張する 踊る模様が二重となり 四重となり
重なって 重なって 壮麗な嵐となり うねりにうねる



「場」

わたしたちは何もかもを二つに分けたがった
その二つはただ一本の線で繋がっていた
もっと速く もっと高く もっと多く!
それは世界をどこまでも狭くした
わたしたちは進みつづけていると思いこんでいた
なぜ なぜ こんなにも貧しい?

ただ 前を見て走っていた
速すぎて 何もかもが形をなさずに通りすぎていった
創世のために 歩くこと 立ち止まること
すべての息づきに全身全霊を澄まし
わたしも宇宙も 生まれる蕾たちに覆いつくされる
ほころんで みるみると溢れかえる さまざまな花々
外へ 内へ 放たれ 灯る 静かな光たち

死へ向かって 白く濁りゆく官界
視力が低下してもなお 眼差しを強めたなら
光が真円の虹を放つだろう
それらの疎に密に瞬く虹たち そこここで重なりあいつつ交響する量子たち
朧を朧のままに はっきりと抱きとめること
まぼろし まほろば



「一体?」

風の 火の 水の 木の
数えきれない物音のうちで
声に変わる物音のそとで
枯れ落ちていく葉
枯れ落ちていく人
ああ 森をゆさぶるのは誰

あなたは透明に 歌うように呼んだ
時空を引き裂いて
愛と呪いを流しこんだ
その傷が青く光る
ああ 人生という空洞のうちに その声がいつまでも反響する
うちと そととが たやすく裏返る

幹も枝も多くが朽ち果て おびただしい菌や虫に寄生されながらも 葉はまだ萌えているか 陽を浴びて透きとおっているか 道と水を巡らせては……

# by ototogengo | 2019-06-17 01:16 |

詩 118

4月5~9日に書いた三作。


「産卵 散乱 燦爛」

数多(あまた)の光を産卵しながら
神のような虫は虹をわたる
葉は一つの世界だった
世界樹の枝のように道が走る

星よ 瞬いておくれ
五感を超えて わたしたちに囁きかける
そのか弱い声は いつ届く?
器は溢れるのだった それどころか
はなから器をすりぬけるものさえも多すぎた

星たちは河の流れだった
星たちは波うつ海だった
それでいて火をたたえて
神のような虫たちが きらきらと輝くそれらを飲む
各々に異なる様子で やはりきらきらと輝きながら
また一匹 これまた一匹と飛びたつ 羽ばたく
やっておいで そして 自由におゆきなさい



「道」

見せかけの美しさを捨てて
今はただ 静かに深めるとき 空しくして高めるとき
散る花が二度と咲かなくても なお
幾度となく種を放とう



「むげん」

舞い散る花びらは
あわやかな光の群れ
鳥獣虫魚に変身し
飛び 駆け 這い 泳ぐ
そう 絵のなかで
それとも 絵はわたしたちの意識
あるいは わたしたち自身が絵
背へ流れこむ声が世界を開く
影よ その香りと冷たさよ 来たれ

# by ototogengo | 2019-06-17 01:08 |