中島弘貴
by ototogengo


水滴の森について

水滴の森を懐かしく眺めています

一粒一粒のなかにはまるく歪んだ線が何本も並び、重なっています

それらの歪むさまも並ぶさまも重なるさまも、少しずつ違っているのです

それぞれの水滴のなかには、他にも薄い緑じみた染みが映っています

水彩絵の具が落ちいって沈殿したかたちで映っています

それにしても、節くれだった樹々の幹や枝のなんと力強いこと!

眺めていると、その形のまま大きくなってこちらに迫ってきます

涙のかすかに白く濁った膜がゆるゆると波うち、しかしそれは決して零れてはならないのです

豊かな、やわらかい足音

その音を構成する小さな一つ一つが少しずつ浮き上がり、やがて速度を増して昇り、やがて見えなくなります

見上げると、まさに空に吸い込まれていく、といった様子です

それらは白いような黄色いような反射でときどきぼう、と光っています

いつのまにか、かすかに白く濁った薄膜は透きとおり、やはり水滴の森を歩いてゆきます
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by ototogengo | 2009-05-16 00:30 | はなし
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