中島弘貴
by ototogengo


『蛍石の霜が降りる夜に』

深夜に外へ出ると、あたり一面に蛍石の霜が降りていた。緑から紫へ至るうっすら色づいたグラデーションでやさしくかすかな光が仄めいていた。しゃぐしゃぐと砕く感触を踏みしめながらゆっくりと歩みを進めていく。
まばらに灯る家々の窓からの明かりが夜に滲んでいる。屋根や樹との間からはほんの少しだけ欠けた、半ば溶けたように黄色くぼやけた月が下空に浮かんで見える。それらは霜にかすかな照り映えをあたえている。見上げると、大小たくさんの星ぼしが瞬き、呼吸をしているようだ。
(ああ、今夜はまたとない良い夜だ)
今日一日の歯がゆさも疲れも、満ちる感動をとっぷりと深めるのだった。
(布団に入ったらぐっすり眠れるだろう)
彼はさらにゆったりとして家路を歩き続けるのだった。
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by ototogengo | 2012-01-15 00:53 | はなし
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