中島弘貴
by ototogengo


『光を愛した蜘蛛』

その蜘蛛は幼い頃から光に強く魅せられていた。そして、どうしても光が欲しかったために半透明の白く美しい網を張ったのだ。朝と昼には太陽の光を、夜には月や星の光をつかまえる。そして、次は集めたそれらを使って、光の網をこしらえたのだった。

そうしてできた光の網は色をつかまえるということが分かった。雨の日の雫や雲の灰色を、晴れた空の青を、草木の緑を、虹の七色を。それらはみんなすばらしかったが、彼がもっとも落ち着くのは、夜の色をつかまえて深い藍に染まった網にゆられながら眠るときだった。そんな網に抱きとめられて安らかな眠りにゆっくりとおちながら、彼は光をもっと深く愛せるようになったことにいつも感謝するのだった。
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by ototogengo | 2012-02-04 00:38 | はなし
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