中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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『爪の結晶の収集家の独白』

放っておくと、結晶化する手の爪は毎度思いも寄らないすがたに、指先の延長線の斜め上方へ向かって成長する。例えば、前々回の右手人差し指の爪は小さく険しい紅く透明な山脈のように、前回の左手小指の爪は光沢の強い銀色のきっちりとした立方体の積み重なりとして、今回の左手親指の爪は夥しい水色の針でできた半球のようになった。例外なく独特でうつくしいものになるので、仕事に支障が出るほど大きくなったら、その都度根本から丁寧に剥がして保管しておくようにしている。

思えば、自分の爪の結晶の収集を始めてから早七年以上が経った。今や、そのコレクションの総数は3000に近づこうとしている。幾何学的なものや心臓形をしたもの、樹木やシダ植物にそっくりのもの、葡萄の房のような玉の重なりやきのこのようなかたちをしたもの。その姿は驚くべき多様さを備え、色もまた七色にとどまらず多種の金属色、マーブル模様や蛋白色、玉虫色を呈する幾色もの混淆(こんこう)、当たる光によって大きく変色する、あるいは燐光を放つものなど、個体ごとの特徴の豊富は想像を絶する。わたしは今日も成長過程の自分の爪のそれぞれを、また大きな棚にしまってある小さな箱詰めの結晶たちの一つ一つを飽くことなく愛でる。矯(た)めつ眇(すが)めつするのみでなく、指の腹でなぞってみたり頬にすりつけてみたりしてその触感や温度をも愉しんでいるという具合だ。わたしはこれらの小宇宙のすばらしさにただただ魅せられているというわけなのだ。これまでもずっとそうだったし、これからも変わらず、いや、ますますそうすることだろう。
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by ototogengo | 2012-07-18 19:56 | はなし | Comments(0)
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