中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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『岩のなかの透明な樹』

「象の体ほどもある巨大な岩が、この海岸には多くあります。複雑にひび割れていたり、穴の空いていたりしているものがほとんどです」

「岩を割ると、そのひび割れや穴が全体として樹形を成していることが判明しました。それには葉や花や実や芽などの異なる形が季節に応じて見られるので、岩のなかで透明な樹が生長していると推測できるのです。ちなみに、これは同じ岩の断面を一カ月ごとに写したものです。この部分が葉、この部分が花、この部分が実ですね。12月には葉が落ち、小さな丸い実がわずかに残ります。さらに一ヶ月後には冬芽がぽつぽつと現れ始めますが、これらは春になると開く葉の赤ちゃんです。実に可愛らしいですね」

「そして、これらの樹は形態の特徴によって幾つかの種類に分けられます。例えば、この岩のひび割れとこの岩のひび割れとでは、幹や枝の形が随分と違うでしょう?そのねじれ方や分かれ方をじっくりと観察すれば、よりはっきりと各種の違いを知ることができます」

「また、この辺りに落ちているさほど大きくない石を割ると、その中の空洞やひび割れが種や双葉を成していることがよくあります。つまり、それらがやがて樹に生長するんですね。一つの石や岩ごとに一本の樹の育つ場合が多いですが、幾つかの個体が共生している岩もあります。これまでに発見されたなかで、その数の最も多かったのがこちらです。幹や枝や葉などが複雑に交差して絡み合い、密集しています。調査の結果、九本の樹がこの岩のなかに生えていることが分かりました。一本一本を見分けることすら困難ですが、実に美しい模様になっているとは思いませんか」

「これらの透明な樹が、それぞれ隔たったところにある石や岩になぜ分布しているのか。その真相は明らかになっていません。風を媒介にして見えない種が元の岩から別の岩の中へ運ばれるだとか、見えない果実を食べる見えない虫や鳥に種を運んでもらっているだとか、元々途轍もなく大きな一枚岩だったものの中に種が散らばっていたが、その岩が割れてばらばらになったときに種も一緒に分かれた、などの諸説がありますが、どれも常識からすると信じ難いですね。特に、先に言った二つの説が事実だとすれば、実や種や虫や鳥が岩をすり抜けられねばならないという理屈になりますから」
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by ototogengo | 2013-01-24 13:08 | はなし
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