中島弘貴
by ototogengo


稲妻と地面のひび

青年「ここの土は乾いてるね」
少年「うん。乾いてひびが入ってる」
青年「このひびは何の形に見える?」
少年「稲妻みたいだ」
青年「これが本当の稲妻だとしたら、どう思う?」
少年「そんなわけないよ」
青年「どうして?」
少年「だって、稲妻だったら大きな音をたてるし、もっと速く動くはずだもん。それに、たくさんのものを壊すはずだよ」
青年「そうだね。だけど、おとなしい稲妻だってあるかもしれないよ。空のなかを一瞬で走る稲妻の数億分の一の速さで地面を走る稲妻がね」
少年「でも、やっぱり稲妻じゃないよ。稲妻ならまぶしいはずだけど、このひびは黒いもん」
青年「地面にあって、おとなしくて遅くて黒い。空の稲妻とは全然違う、そんな稲妻があってもいいと思うけどな」
少年「だけど、やっぱり地面のひびは地面のひびだよ。稲妻が稲妻なのと同じで」
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by ototogengo | 2016-08-16 02:02 | はなし
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