中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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2017年2月24日 Slapp Happy来日ライブレポート

Slapp Happy(スラップハッピー)…1972年にドイツで結成された三人組のバンド。三枚のアルバムを出したあと、1975年に活動を停止。1998年に23年ぶりとなるアルバムを発表し、2000年には来日公演も行った。彼らは2016年下旬からライブ活動を再開し、2017年2月にオリジナルメンバーによる二度目の来日公演を果たした。ポップかつ実験的な音楽性から、彼らはアヴァンポップバンドと呼ばれることもある。

2017年2月24日(金)Slapp Happy来日ライブ
(Mt. RAINIER HALL SHIBUYAにて)
〈セットリスト〉
(第1部)
01. A Little Something
02. Me and Parvati
03. Michelangelo
04. Mr.Rainbow
05. The Secret
06. Small Hands of Stone
07. Silent the Voice
08. Who’s Gonna Help Me Now?
09. Blue Flower
10. Casablanca Moon
11. Just a Conversation

(第2部)
12. Charlie’n Charlie
13. Slow Moon’s Rose
14. Child Then(→Some Questions About Hats)
15. King of Straw
16. Scarred for Life
17. The Unborn Byron
18. I’m All Alone
19. Let’s Travel Light
20. Heading for Kyoto
21. Dawn
22. The Drum

(アンコール)
23. Blue Flower
24. Who’s Gonna Help Me Now?

〈メンバー〉
Dagmar Krause - vocal
Peter Blegvad - guitar, vocal
Anthony Moore - keyboard, guitar, chorus


〈ライブレポート〉(※以下、曲名を“”の中に記します)
 開演時間になり、メンバー三人が登場。とても背の高いピーター・ブレグヴァドを先頭に、小柄なダグマー・クラウゼ、中背のアンソニー・ムーアが続く。客席から見て、ピーターが左手、ダグマーが中央、アンソニーが右手に位置どり、ついに演奏が始まった。十年以上前から観ることを切望し続けてきたスラップハッピーのライブだ。
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 声域が低くなったものの、ダグマーの硬質な歌声は顕在。また、その声域の変化があったからこそ、絞りだすように歌いあげる場面やファルセットで繊細な高音を出す場面が際立った。ギタリストのピーターはほほえみながら演奏する場面が多く、たのしそう。押さえどころは押さえつつ、遊びを垣間見せるギタープレイが小気味良く、その歌声は温かくて力強い。アンソニーはキーボードがメインだが、曲によってギターに持ち替える。キーボードで出すことの多かった、水のように透明感のある優しい音色が心地良かった。
 “Just a Conversation”の演奏中には、ダグマーが電話機に模した小道具を持ちながら話をするという寸劇を演じた。“Let’s Travel Light” の間奏では、ピーターが口笛を、アンソニーがカズーを吹き、“I’m All Alone”の間奏では、メンバー三人が同時に(!)半即興的なハーモニカを吹いた。また、“Child Then”が“Some Questions About Hats”へと滑らかに移行し、後者の曲をワンコーラスだけ歌って終わるという心憎い演出もあった。以上のような遊び心にあふれる演奏が彼らの魅力の一つだ。それが特に顕著に感じられたのは“Blue Flower”で披露した、ピーターとアンソニーによるヴェルヴェットアンダーグラウンド(※主に1960年代後半~70年代前半に活動したアメリカのバンド。初期に芸術家のアンディ・ウォーホルと関係があった)風のツインギタープレイ。MCでダグマーがヴェルヴェットアンダーグラウンドから影響を受けたと言っていたが、二人とも実にたのしそうにギターを弾いていた。
 一方、彼らは曲や場面によってシリアスな演奏をした。“Mr.Rainbow”の激しさ、“Silent the Voice”の荘厳さ、“Slow Moon’s Rose”の穏やかさ、“Scarred for Life”の切なさ、“The Unborn Byron”の神秘性など…シリアスかつシンプルな演奏がそれらの特徴を引き立てていた。ダグマーが鬼気迫る絶唱をみせた“Mr.Rainbow”と、演奏中に涙する観客もいた“Scarred for Life”は、この日のライブのなかでも特に心を揺さぶられた曲だ。
 ピーターが「タンゴだ」と言ってから名曲“Casablanca Moon”の演奏を始めると、客席から大きな拍手がわきおこったのも印象的だった。

 MCやライブ中の立ち振る舞いなどから、三人のチャーミングな人柄もうかがえた。ピーターがユーモアをまじえ、最も多く話した。第二部に入ったときに「ぼくたちは眠いから、目を覚ますためにこの曲を演奏する」という意味合いの言葉をおどけて話したことが記憶に残っている。アンソニーは物静かだが、突然おもしろい発言をする。“Mr.Rainbow”を演奏する前に、「ラウドにしよう。ライブなんだから」というようなことを言ったり、“Child Then”を演奏する前に「ぼくは子どもだ」という意味合いのことを言ったり。このように形容すると失礼にあたるかもしれないが、ダグマーは姿も言動も可愛らしかった。日本語に興味があるらしく、「こんばんは」という言葉を観客に言わせ、それに続いて彼女自身が発音するという一幕もあった。何よりも印象深かったのは、二度目のアンコールのあとでダグマーが観客に向かって何度も「ありがとう」と言い、マイクのスイッチが切れてからも、たぶん「ありがとう」と言い続けていたことだ。こちらこそ、まさかの再来日ライブを観られ、さらに二度ものアンコールに応えてもらえて、感謝の念しかない。以上の経緯もふくめ、忘れがたい一夜になった。

 ずっと前から、スラップハッピーのことを「魔法のようなバンド」だと思っていた。今回のライブを観る前には、その魔法がとけてしまうのではないかという不安もあった。だが、実際にライブを観ると、その不安はすっかりなくなった。それどころか、彼らは「魔法のようなバンド」だという実感がさらに強まった。スラップハッピーに出会えて良かった。彼らはとても不思議なバンドで、これほど愛おしく思えるバンドは他にない。
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by ototogengo | 2017-02-27 21:17 | Comments(0)
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