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中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、絵、音楽、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。


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詩 3

2018年1月3~8日に書いた四作。


「透明な夜」

冷たい夜
透明な闇が果てしなく広がるような
同時に多面体の群れに結晶するような
その静けさ
近いのに遠いような

凍るような風
樹々をゆらし、草々をうねらせて鳴かせる
硝子をふるわせ、鉄をたたいて鳴かせる
それらの鳴き声の多様さ
近いのに遠いような

透明な闇は粉々に砕け
空気はちらちらと煌く、きらきらと瞬く
その痛いような美しさ
近いのに遠いような

家の灯が近づく
夕食の香りが漂う
その光と匂いの温かさ、懐かしさ
近いのに遠いような



「植物らしきものたち」

自分のうちに植物らしきものたちがあり
その草や樹は根を深く下ろしながら茎や枝を伸ばして葉を広げ
苔や地衣らしきものに寄生されたり、それらと共生したりしつつ
さまざまな形の花を咲かせて閃く種子を飛び散らせる
それは自分のうちで繁茂して
はちきれんばかりに埋めつくし
くらくらする匂いで満たす

ついに、それらは自分を突き破る
そのときに初めて知る
自分の外郭が樹皮らしきものであり、自分自身も樹らしきものであったと

その樹のうろから植物らしきものたちが広がり
草や樹が根を深く下ろしながら茎や枝を伸ばして芽をつけ
羊歯や黴らしきものに寄生されたり、それらと共生したりしつつ
色とりどりに輝く花を咲かせて光る果実を膨らませる
それは世界のあちこちに繁茂して
隠れた領域を照らしだし
豊かな感触を呼びさます

自分はもはや自分ではなく、世界はもはや世界ではない
しかし、自分が自分であり世界が世界であったときなど、未だかつて存在しただろうか?



「美」

どれほど身構えようとも
美はわたしを不意打ちする
瞬きよりも速く、光よりも鮮やかに
その不意打ちには魅せられるしかない
美はわたしを超えたものとしてあらわれるのかもしれない



「美から」

美の不意打ち
それがなければ、人生はどれほど味気ないだろう
美の体験
それは驚くべき対象との遭遇であり、自己の驚くべき部分との遭遇でもある

外と内の扉を同時に開く痙攣
細やかな樹枝状の雷が駆けめぐる
世界を満たし、かつ虚ろにする
自己を満たし、かつ虚ろにする
そこから何かが生まれる





by ototogengo | 2018-01-10 12:44 |
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