中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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カテゴリ:はなし( 79 )

春の日に八朔の山で

この山は瑞々しい八朔の果肉で出来ている

跳びあがったら最後、着地点の大きな粒が弾け、冷たい果汁が飛び散って付着し、べたべたする

それは乾いても斑のある黄色い染みになる

静かに歩く

気持ちのいい弾力が感じられる

静かに歩く

気持ちのいい弾力が感じられる

ちょうどいい木陰を見つける

両手を山肌につくようにして倒れこむ

気持ちのいい弾力が感じられる

大きな粒に体を圧しつけながら寝転がり、仰向けになって体をあずける

半ばうずまり、弾力が感じられている

木漏れ日と陰の色と形が、瞼のうえに見える

浅く、気持ちよく眠る

半ばうずまったまま、弾力が感じられている

木漏れ日と陰の色と形が瞼のうえに見え、うごいている



※八朔(はっさく)、斑(まだら)
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by ototogengo | 2009-05-19 23:30 | はなし

水滴の森について

水滴の森を懐かしく眺めています

一粒一粒のなかにはまるく歪んだ線が何本も並び、重なっています

それらの歪むさまも並ぶさまも重なるさまも、少しずつ違っているのです

それぞれの水滴のなかには、他にも薄い緑じみた染みが映っています

水彩絵の具が落ちいって沈殿したかたちで映っています

それにしても、節くれだった樹々の幹や枝のなんと力強いこと!

眺めていると、その形のまま大きくなってこちらに迫ってきます

涙のかすかに白く濁った膜がゆるゆると波うち、しかしそれは決して零れてはならないのです

豊かな、やわらかい足音

その音を構成する小さな一つ一つが少しずつ浮き上がり、やがて速度を増して昇り、やがて見えなくなります

見上げると、まさに空に吸い込まれていく、といった様子です

それらは白いような黄色いような反射でときどきぼう、と光っています

いつのまにか、かすかに白く濁った薄膜は透きとおり、やはり水滴の森を歩いてゆきます
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by ototogengo | 2009-05-16 00:30 | はなし

苔の彼について

その幾層にもなり、所所(ところどこ)に剥がれ落ちた苔の皮膚を、その奥に覗く橙色と桃色の混じった、水けを帯びた肉体を、みる

彼は話さない

彼は鳴かない

足音も立てず、土の上を辷るように歩いていく

よく湖や河のそばで見かけるが、水を飲む様子はおろか、水浴びをする様子すら見た試しがない

深夜から朝にかけ、彼はどっしりした樹の根の上で蹲り、微動だにせず眠るので、霧の濃いなかで早朝の散歩をするときには、彼の存在に気付かずに足を引っ掛け、危うく転びそうになることも度々だ

そのように(もちろん、わざとにではないが)蹴り飛ばされ、頭を地面にぶつけても、彼は決して目覚めない

いつものように、ようやく正午前に目覚めて体を起こすと、苔の皮膚の剥がれやひび割れがひどくなっていることに気づいて呆然と立ち尽くすのだが、ほんの5秒もするとけろりとして歩きはじめる
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by ototogengo | 2009-04-19 00:32 | はなし

沈みこむ

疲れ果てて寝床につくと、敷き布団はゆっくりとどこまでも柔らかに沈みこみ、床よりも3メートルほど下にまで落ちこんでようやく止まった

横になる前に弱くした白熱電球の光があんなにも遠い

目を瞑る直前に見た、細い幾条かの光線の伸びていく様子が、眠りにおちて暗くなっていく頭のなかに残っていた
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by ototogengo | 2009-03-27 21:29 | はなし

蔦の男

彼はこの五年間、滅多に外へ出ず、家に篭りがちな生活を続けていた

今や、彼の全身は蔦で覆われていた

ちょうど冬枯れが終りをむかえるところなので、乾いた黒っぽい褐色の茎と、ほとんど同じ色(もう少し赤みや黄みを帯びた部分があるものの)に枯れ萎れた数枚の葉が形をとどめているのみだが、今に鮮やかな黄緑の若葉がみずみずしく芽を吹き出すだろう

春が来ている
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by ototogengo | 2009-03-23 23:04 | はなし

空に月が3つ4つ浮かんでいました

昨夜の空には赤みを帯びた満月、白い上弦の半月と左向きの三日月の3つの月(もしくは他にももう1つ、新月があったかも知れません)が別々に離れて浮かんでいました

昼間のうちに月が増殖したのでしょう

恐らくは、例のごとく孵化によって
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by ototogengo | 2009-03-12 00:48 | はなし

2月20日

桃色のかたつむりの体はこんなにもこんなにも伸びながら曲がり、円をえがき、絡みあい、大樹を形づくります
彼の殻はほとんど地面に埋まっており、その丸みの一部が少しだけ地表に出ています
そして、大樹の幹や枝を入念に観察すれば、かたつむりの触覚がどこかにあることを発見できるでしょう

触覚は見つかりましたか?
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by ototogengo | 2009-02-20 23:42 | はなし

2月10日

雲から伸び出す樹を見たことがありますか?白に少し灰色の混じった、雲でできた樹です。

いくつかの交わった、どしりとした幹をくねらせて中空へ伸びていきます。頂き近くまで上ると、たくさんの細い枝を細かく、たくさんに分かれ伸ばし、気持ちよさそうに、ぱらばらと小さく開きます。先がすうっと伸びるものもあれば、ふいっと曲がり伸びるものもあります。それら全ての線は密で、ひとつ残らず生きています。

そうそう、低空にあるあのはっきりとした雲からも伸び出していますよ。
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by ototogengo | 2009-02-11 01:34 | はなし

05年11月

大河の水面は腹か、それとも背か
それは脂肪に柔らかく覆われた腹のように見える
女性の素晴らしく優しいお腹のように
彼女等は太陽に腹を向け、背泳ぎを心行くまで愉しむのだ
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by ototogengo | 2007-11-15 01:27 | はなし