中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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カテゴリ:言葉( 121 )

涙の降る小島

夕方から零れはじめた世界中全ての涙は夜の深まりと共に数を増しながら滴り続け、明け方にはある一つの小島の地表を覆い尽くす、逆様のつららに似た石筍の群れをつくる。赤から白へと移る曙光がじわじわとそれらを溶かし、流し、多くの水溜りを生む。丘や平野の地形に沿って曲がりくねりながら繋がる、あるいは丸みを帯びて点在する、陽を受けて輝くその一面の模様の美しさに、思わず息を止めた。
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by ototogengo | 2012-04-04 03:25 | 言葉 | Comments(0)

雨の指紋

磨り減ってぽろぽろと剥がれ落ちた雨の指紋を探すために草叢のなかで這いつくばると、単子葉類の葉の裏に蝶が逆さになって掴まっていた。その翅(はね)に雨の雫が球をなして付着している。
ともかく探索を再開し、あたりの草の根元に落ちた破片と一枚の葉にぶらさがったそれを見つけると、ようやく雨の人指し指の指紋がほぼ完全に復元できた。これまで気に留めていなかったが、改めてよく見てみると、見れば見るほど不思議な模様をしている。崩れないようにそおっと足を運んで家へ持ち帰った。光を反射する透明なそれは一足毎にふるふると震えた。
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by ototogengo | 2011-08-19 23:08 | 言葉 | Comments(0)

ほおずきの種が発光する

ほおずきの実の表皮はその形を保ったまま茶色く枯れはじめ、細かい網目模様が全体へ及ぶまでに薄くなった。すると、そうして半ば表皮が透けることによって青、赤、緑、橙、黄など色とりどりのうちの一色ずつに染まった大粒の種が各々の実の中心に入っていることが明らかになった。そのうちの一つを両手で包みこんでごらん。この昼間においてもその種がぼおっと淡く発光していることを確認できるだろう。
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by ototogengo | 2011-08-02 00:26 | 言葉 | Comments(0)

白い浴室の情景

白い浴室に入って髪の毛や体を洗っていると、その壁に飛び散った細かな白い泡が一つの情景を形づくる。一昨日は伸びだして盛りあがる樹々の下に様々なきのこが点々とする森の様子を。昨日はあるものが這い、あるものが飛びかう大小の昆虫たちの一大模様を。今日は分岐に分岐を重ねる珊瑚が取り囲むなかを遊泳する魚や海月、海老や蛸たちの群れを。それらはいつも微かにしゅわしゅわと音を立てながら間もなく崩れて消え去るが、それでもいい。明日もまた現れるであろう二度とない情景をたのしみにし、それが存在する間は夢中になって体験しよう。
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by ototogengo | 2011-07-20 22:54 | 言葉 | Comments(0)

曇りのちスグリ

明るく白んだ青空に紅い巨大な雲が幾つか浮かんでいた。光沢のある粒々で構成されているかと思えば、そのそれぞれはスグリの果実だった。

やがて夕陽に照らされて、雲の色はますます深くなる。にわかにそれらがばらばらと崩れ落ちていくのが見えると、間もなく大粒の夕立ちになった。できるだけ屋根に守られたところを選んで通りながら職場へ戻り、余った傘を手に入れる。

降りそそぐスグリの実を傘で受けていると、ぱちぱちぱちぱちと傘の中で良く反響する音が鳴り続ける。終日晴れの天気予報を当てにして洗濯物を干していたので、これらが熟す前の固い実で本当に良かった。おかげさまで、うつくしい情景と音響を気兼ねなく満喫できる。もしも熟していたら、ことごとく果肉が弾けて笑いごとでは済まなかっただろう。
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by ototogengo | 2011-04-03 22:29 | 言葉 | Comments(0)

11年3月24日

裂け目からざくろの果実へ入っていく。ぎっしり詰まった紅い果肉の群れをかき分けて進むと視界が開け、その先には長い長い銀杏の並木道が続いていた。青空は高く、太陽が眩しかった。とはいえ、外の時間はもう遅かったので彼らはそこで引き返し、外へ出てお別れをしてそれぞれの家に帰った。

それからというものの、ざくろのなかが子供たちの秘密の遊び場になった。人の住み家はないがどこまでも続いており、奥へ行けば行くほどに広い。今日は東の広葉樹の森を探検することにした。温かな木漏れ日のなか、鹿や狐やきのこと出会えることを期待して。蝶々(ちょうちょ)や蜜蜂でいっぱいのお花畑も見つけられるかも知れない。森のなかは樹々と土とお日様によって、やさしい香りのするやわらかな空気で満ちていた。スズメバチや熊やヘビに遭遇するのが少し恐ろしかったが、うきうきわくわくする気持ちの方がはるかに強かった。
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by ototogengo | 2011-03-24 14:19 | 言葉 | Comments(0)

2011年3月23日

光が半ば固体化した石灰質の漆黒の隙間を縫ってまっすぐに降りそそぐと、大地のあちこちを光の点たちや単細胞に似た小さな形たちが照らしだす。それは染みのようだが、こんなにもうつくしい染みを見たことがない。

その光の染みの一つ一つから瑞々しい黄緑の芽が生まれ、陽光にそって真上に、あるいは斜め上に伸びていく。樹と蔦の合いの子、緑色の幹と枝や褐色の蔓(つる)を持つ多様な植物たちは決してどっしりとはしないが、確かに成長していく。あるものは花を開きながら、あるものは丸い実や綿毛をいっぱいつけながら、分岐する枝や茎を螺旋状に伸ばして葉を繁らせる。

ついにそれらの植物の幾つかが漆黒の外側に達する。その闇の土壌に種が落ち、次の世代はそこに根を下ろして空へ向かう。樹木に草やシダや苔を加えてより豊かに、より力強く育つ森は実にうつくしい。

雨が降り続き、河や湖が現れた。動物も、鳥も虫も菌類も現れた。彼らが長く暮らすなかで漆黒が少しずつ少しずつ分解されて香りのいい土に生まれ変わったとき、光の染みから芽生えた植物たちもこれまで通り、あるいはこれまでよりももっと健やかに育っていた。
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by ototogengo | 2011-03-23 19:00 | 言葉 | Comments(0)

ここ数日に記した9篇

1.

地面に撒いた水が立ちあがって草や苔やきのこに固まった


2.

落ち葉が降りながら赤や緑や黄や青や紫の炎をあげる


3.

水が集まって膨らむ

丸みを帯びるにつれて、ゆっくりと回転しつつオパールの光沢が深みを増して加わり、透明と逆転する

色の火を内に灯した白くてまんまるい雫が落ちる、大きく大きく目の前を通り過ぎる


4.

伸びながら分岐していく茎の色もまた生きている 落ち着いた黄緑のなかから溶けだし、染みだす桃色や黄色、藍色の淡い、もしくは鮮やかな移ろいが大きく小さく、また大きくなる


5.

灯りの下で育つ光る花を眺めている

放射する細かな細かな白や黄の粒が花の上に降り注ぐ

何もせず、それ以外に何も起こらない


6.

雲が花を咲かせる

ほら、そこを流れていく雲は小さな花で満開だ

今日は曇りなのに、こんなにもうきうきする

雲と花でいっぱいの空


7.

草が逆立ちを始めたよ

空に向かって開かれた、ひょろひょろした根っこが可愛い


8.

星なのか雲の実なのか、あるいはその両方か

あそこは仄かにと言いきれないくらい黄みや赤みを帯びているから雲の実の可能性が高そうだ

満天にびっしりと


9.

豊かな芸術は豊かな生活を生む、豊かな生活は豊かな芸術を生む




大事に思える物事を捉まえて記せたとき、生きた心地になって救われます。それらを捉まえようといつも主体的に待っています。
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by ototogengo | 2010-09-17 01:06 | 言葉 | Comments(0)

ここ数日の作文

1.

今日は梅雨の晴れ間

二日間の雨でできた水たまりに一日生の睡蓮の花が開いている


2.

夏は昼間がとろとろに熟れる

風が吹く、歩いて体が触れる、そういった些細な拍子で流れだす


3.

近所の森で椅子の苗を5本、机の苗を2本摘んできた

ベランダの日当たりのいいところに置いて育てようと思う

次の夏までには立派に育つだろう


4.

彼らは逆立ちしたブドウのような全体の紫陽花の家に住んでいます

いろいろな淡い色のまるまるとした花の集まりが積み重なるようにして空へ向かっているのです


5.

半分透けた黒色のなかで蹲(うずくま)ったまま閉じこもっている

どこが地面なのか分からない

姿のない森が姿のない風を受けて、取り込んで、ざわめいている

やさしくそっと回っているのに浮かない気持ち

ぼお、ぼお、と生き物によるものでも楽器によるものでもない音が響きわたってこだまする

平衡を失くすのめり込み


6.

揺らいで白の隙間がわずかに時折覗く真っ暗な面に色々な色が滴り落ちた

それらのゆがんだ円のそれぞれから同じ色の芽がすっくと立ち上がる

あるものは頭を傾げて、あるものは首を垂れて、あるものは真っ直ぐに伸びている

子葉がするりはらりと次々に開く
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by ototogengo | 2010-07-01 01:04 | 言葉 | Comments(0)

6月1日

「みなさんの言葉は泡です」

「今のM氏のようにはっきりと話すと大きなものと小さなたくさんの泡が、あのI氏のように早口だともっと小さな泡がもっとたくさん生まれて上(のぼ)っていきます。天井の隅の方に一等大きな泡がゆらゆらしているでしょう?上った泡があそこに溜まっているんですよ。ほら、またそこに新しい泡がぶつかって合わさった」

「この会場の盛況から推し量るに、このままあれがもっと大きくなって、ともすると天井全面を覆う層になるかも知れませんね」

「まあ、どうあっても我々の顔の高さまであれが膨らむことはないでしょうから、ご安心ください」
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by ototogengo | 2010-06-02 12:45 | 言葉 | Comments(0)