中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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<   2009年 08月 ( 6 )   > この月の画像一覧

昨日の話

痩せっぽちの、短い白髪に浅黒い顔のおじいさんが、どこか遠くを見やりながら話し掛けてくる

青年はそれに応える

おじいさんはさらに話し続ける

青年は相槌を打つ

おじいさんはまだ話しながら、右の頬を左手でこすり始める

青年は相槌を打ちながら、その様子を見ている

おじいさんの人指し指に黒ずんだ何かが付着し始め、細い塊になって指と頬に挟まれながら転がる

青年は垢だろうか、と訝しがって見る

おじいさんの頬と指の間から、黒ずんだ塊がこぼれる

青年は話を聞く姿勢を保ったまま、それを目で追う

それはくるくると回りながら、落ちていく

・・・・・・・・・

ああ

それは蟻だった

頭に光沢のある蟻だった

蟻は着地すると、事も無げにすぐさま歩き出す

おじいさんは別のどこか遠くに視線を移し、なおも話している

なおも頬をこすっている

ぽろ、ぽろ、ほろ、ほろ、蟻が落ちる

青年は空で返事をしながら、それらに注目している

おじいさんは、なおも話し続ける

なおも話し続けながら、次は首をこすりはじめる

やはり、ぽろ、ぽろ、ほろ、ほろ、蟻が落ちる

蟻たちは着地すると、事も無げにすぐさま歩き出し、すこし歪んだ列になって進んでいく

あっちとこっちの方向に、合わせて二つの列になって、進んでいく
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by ototogengo | 2009-08-31 01:36 | はなし

超男性ジャリ

超男性ジャリ

ラシルド夫人 / 作品社

スコア:



想像力による解決の科学『パタフィジック』の創始者であるアルフレッド・ジャリの伝記。彼と長く交流のあった唯一の女友達、ラシルド夫人による著書。

諧謔と皮肉に満ち満ちたジャリはとても魅力的な人物だ。彼に心酔していたというボリス・ヴィアン同様、彼もまた余りにも人間らしい、人間らし過ぎる人物だったんじゃないだろうか。
行き過ぎた感性、そしてそれによって構築される理性は、その所持者を翻弄する。想像を現実にする力を持ちすぎたジャリは、他ならぬ彼自身による創造物に人格や生活様式の多くを再創造されたのかも知れない。しかし、人間の範疇を超えたそれに、肉体は耐えることができないのだ。その結果だろうか、彼は34歳にして夭折する。
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by ototogengo | 2009-08-25 07:55 | 本や音楽などの紹介

根の魚

流れが上を下へと押し寄せてくる

全身はくねり、ねじれ、伸びきっている

どうやら全身は伸びきりすぎたようだ

体はどこもかしこも細く長く、ぱんぱんに固い

瞼の裏の発光する鈍い黄色が

次にあらわれる発光する赤錆色が

発光する苔色に変わるときに

(大小の泡が光っている)

分岐して細まっていく、うつくしい根の魚に変わる

水の流れに擦れ、水底の尖った石に擦れ、それらは変わりながら続き、変わりながら続いて、

それでもなお、体の光沢が照る

そこここで、なめらかに滑りながら照る

発光する淡い藍色を見ている
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by ototogengo | 2009-08-23 22:22 | 言葉

8月21日

雲が中空からゆっくりと手を伸ばすように降りてきて、胸の高さまで持ちあげ、上を向けていた彼女の手の平に触れました

それは彼らなりの、好意を示す挨拶です
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by ototogengo | 2009-08-22 00:31 | 言葉

「心臓の樹について」

高山イソギンチャク、翼の生えた脚の長いワニ、食べると練乳のように甘い白色の苔…奇妙な動物や植物を作品のなかで量産したデンマークの童話作家ビャーネ・ヤコブセンは、未完の作のなかに最高傑作ともいえる、とんでもない植物を登場させている。その作品は作家の死後、自宅で発見されたノートに冒頭の数行だけが記されていたものであるが、ページの欄外に丸で囲まれた走り書きの文字『BULLALANN-BULLALAN(バララン-バララン)』が記されていたため、それが題名であると考えられている。彼の他の作品の書かれたノートを調べると、やはり同様の方法で題名が記載されているのだ。その全文は以下のとおりである。

“黄緑色のとんがり帽子が似合う男の子、ベルベルくんは森のなかにいました。季節は夏の始まり。波のある海のように緑色をひろげる樹々が、透明な木の実をいっぱいにつけているのでした。心臓のかたちの、それらの小さい木の実は、どくん、どっくんと脈うっていました。そのなかには、サクランボのような長い柄が途中でちぎれて、地面に落ちているものもありましたが、それでもまだ、とっくん、とくんと動いているのです。森のなかはそれぞれの木の実が動く小さな音がたくさん集まって、その音でいっぱいになっていました。ベルベルくんはとてもそわそわするような、けれどもとてもほっとするような気持ちで歩いていました”

ところで、バララン-バラランとは一体何を示しているのだろうか。作者の十八番である創作擬音の一種か、ベルベルくんの歩いている森の名前か、これからのはなしに深く関わってくるはずであっただろう人物や存在の名前か。いや、やはり自分にはこの透明な木の実をつける樹がバララン-バラランであるという気がしてならない。この奇妙にもうつくしい植物に、余りにもぴったりな名前じゃないか。

そして、ベルベルくんのようにこの森に迷い込んだとしたら、誰もが彼と同じような気持ちになるに違いないと思うが、どうだろう。とてもそわそわするような、けれどもとてもほっとするような気持ちに。

(空島出版『植物のはなし』より抜粋)
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by ototogengo | 2009-08-18 10:56 | 空島出版

不確かな予言

渦巻く音よ

我我はその只中にいて、身動きする

色のない声色によって呼応、増幅せよ

流れをうけて足を浮かせ、腕はゆらゆらとゆれる

体温の発熱があり、それはゆるやかに、次いで跳ぶように上昇する

渦巻き 音 音 音

どこまでが立体ですか

どこまでが立体ですか

渦巻いている
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by ototogengo | 2009-08-13 11:34 | 言葉