中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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<   2010年 02月 ( 6 )   > この月の画像一覧

たくさんのこと

昨日は路上演奏をきっかけに出会った友人であるジャズギタリストの宮越宏之くんのライブ演奏を見に、阿佐ヶ谷のジャズカフェへ行ってきました。40分ほどの演奏を3セット、合計で約2時間の演奏をたっぷり体験してきました。普段ジャズを聴くことはほとんどありませんが、彼の温かく、丁寧な演奏はすてきでした。それはまさに彼の人間そのものに思えたので、その人自身と演奏の同一性を再認識しました。真摯に音楽と接している人はとてもすてきです。

さて、同じ夜にもう一つうれしいことがありました。同じく路上で知り合った黒沢陽司くんが立体にギタリストとして正式加入することが決まったのです。
http://www.myspace.com/rittai
(こちらに黒沢くんが演奏に参加した『人声楽』を追加しています)

みんなと別れて家に帰り、その日に作曲した『君のことは知らない』と『朝には忘れるだろう』の2曲を録音。
http://www.myspace.com/nakashimahiroki

画像は昨夜の宮越くんの演奏を聞きながら描いた絵に色をのせたものです。小さい絵なので、画像がぼやけています。

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by ototogengo | 2010-02-27 15:10 | 日記

「トビエビとホタルエビ」

トビウオという魚が胸ビレを羽根のように広げて水上に跳び出し、水面すれすれを見事に滑空することはよく知られている。しかし、それよりも飛距離は劣るものの、同じように飛翔能力のあるエビの存在はあまり知られていない。ここでは、そのトビエビと、近縁種にあたると考えているホタルエビを紹介したい。

沖縄県には座間見島という小さな島がある。その島は沖縄本島より西に20kmほど海を隔てた場所にあるのだが、その北東に黒前崎という岬がある。黒前崎の近くに阿良洞穴という、大人一人が体を屈めて何とか入れるくらいの入口の開いた岩穴があり、その最奥部には小さな湖がある。

ここからは7年前、私が実際に阿良洞穴へ入ったときの体験を記して、話を進めよう。
私が洞穴へ入り、屈んだまま進んでいくうちに辺りは真っ暗闇になった。入口以外に日の射し込む場所が全くないのだ。気を抜くと岩に体のあちこちをぶつけかねないし、どの方向に進んでいるのかさえ分からなくなりそうだったので、慎重に手探りをしながら、じりじりと進んでいった。あたりは静まり返っており、水の跳ねる音だけが遠くから聞こえている。やがて、立ち上がっても全く問題ないくらいに洞内が広くなったので、私はその音のする方向へ、壁に手をつきながら歩いていく。それから5分ほど進むと、水の跳ねる音が大きく、加えて仄かな明かりが奥の方に見えはじめ、そこから1分ほどで目の前が開けた。
そこに湖はあった。湖の隅の方や水底を中心に、淡い水色に光る丸い光が夥しく点在し、洞内が薄ぼんやりと青く照らされ、見渡せるようになっていた。水面から跳び上がる小さな影が幾つも見え、石で水を切ったときのような連続する軌跡と音がある。そのときの感覚を明確に説明する術を持たないが、光を反射する飛沫や水面の揺らめきも含め、私にはその光景が妙に音楽的に感じられ、心が大きく震えたのを未だに、鮮烈に覚えている。

名前から察せられるとおり、そのときに発光していたのがホタルエビの雄で、跳んでいたのがトビエビの雄であった。どちらも体長4~6cmほどの小さなエビであるが、その姿には特筆すべき違いがある。
まず、ホタルエビの雄の背中側の体表には細かな発光器があり、それによって神秘的な柔らかい光を放つことができる。その体色は雌雄ともに蝋梅の花に似た半透明の黄色だが、雌には発光器が存在しない。
次に、トビエビの雄の背中の殻は真ん中で縦に割れて分かれており、後方へ跳べるように、昆虫や鳥のそれとは逆向きの――つまり、背中の下から上へ向かって生える――羽根がついている。周知のとおり、エビは後ろ向きに素早く泳ぐので、そのような構造でないと上手く跳べないのだろう。ちなみに、雌雄ともにトビエビの体は白く、触覚が4~5cmと異様に長いのが特徴であるが、雌にはやはり羽根が存在しない。加えて、トビエビには目がない。退化したのであろうと考えられている。
上述の特徴以外に、この二種に大きな違いはない。冒頭で触れたように、同じ属に含まれる近縁種であるとされているのである。繁殖期も5月~8月と、同時期に訪れる。ホタルエビの雄は発光して雌を誘い、トビエビは跳躍によって生じた水の流れによって長い触角を持つ雌に働きかけるのである。つまり、阿良洞穴を訪れたとき、適当な時期と時間に巡り合わせれば、私のようにすばらしい体験を得ることが出来るというわけだ。

さて、全く同じ環境にある二種が何故このように全く別の形で進化するに至ったのだろう。恐らく、それは繁殖のし難い真っ暗闇の洞穴のなかで、その環境に適応するのか、それとも、その環境を打破するのかを種が選択した結果なのではないかと考えられている。視覚の代わりに触覚を利用しようとしたトビエビが前者、視覚を作用させるために発光器を身に付けたホタルエビが後者であったというわけだ。
ところで、この洞穴は1968年に沖縄地方を襲った、二度にわたる震度4の地震によって入口が開けるまで、人々に知られることはなかった。おそらく数十万年の間、外界から隔てられたままになっていたと考えられる。そのように閉鎖された、長きにわたる困難な状況が、進化の多岐性を端的に表す希有な実例である二種のエビを生み出したのだと思うと、生命の驚異を改めて思い知らされずにはいられない。

(空島出版『水の生き物』より抜粋)
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by ototogengo | 2010-02-24 16:45 | 空島出版

新曲が

昨年11月頃から、たくさんできています

http://www.myspace.com/nakashimahiroki
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by ototogengo | 2010-02-22 22:39 |

「モルモルについて」

モルモルとは、北タンザニアはムワンザ州に住むニュキュサ人の一派、パジャモ族が神事の際に演奏する楽器の名称である。

モルモルは木製の、四角い枠のついた磁石盤を埋め込んだ台と、楽器本体である、底面と内部に空洞がある金属塊の集合から成る。土台となる磁石盤から磁力によって1~2cm浮き上がった金属塊は殆ど多面体に近いが、角は丸い。それが隙間を空けて十数個集まり、全体として高さの小さい、直方体に近い形になる。各々の金属塊の厚みは同じくらいだが、大きさが異なっている。モルモルは獣の骨や象牙や亀の甲羅で作られた、ずんぐりとした指輪を両手の全ての指に嵌め、それらの金属塊を指で叩くことによって演奏されるのだが、その塊が大きければ大きいほど音階は低くなり、小さければ小さいほど高くなる。また、塊の中心を叩くと音階はより低く、縁を叩くと音階はより高くなる。
全て手造りのため、一台のモルモルを構成する金属塊の形の組み合わせはまちまちであるが、本体の演奏面の大きさは縦30cm横110cmほどの大型のものか、縦20cm横60cmほどの小型のものに大別できる。また、モルモルは座って演奏されるため、全体の高さは大型、小型ともに40cm~50cmとなっている。

ンジャ・ピパパと呼ばれる多産を祈る祭りの際には、モルモルのみを十台以上用いて演奏する。その中で人々は火を取り囲み、演奏に合わせて独特の踊りを行うのだ。
まず、祭りはモルモルの透きとおった美しい響きに重点を置いた緩やかな演奏から始まる。踊り手たちは一列に並び、しゃがみ込んで縮こまる。そうして、全体で円を形作るのだ。彼らはそうしながら顔を上げたり、地面すれすれにまで顔を落としたりしながら、片膝を交互に立てて摺り足で進み、火を中心にしてゆっくりと回る。
彼らはやがて中腰になり、やはり顔を上下させながら歩いて進む。その際に、手の平を空に向け、顔の動きと連動させて腕を上下させる。モルモルによる演奏は緩やかなままだが、踊りの進行とともに一音一音の力強さが増していく。
しばらくすると、踊り手たちはようやく立ち上がる。一歩ごとに膝を高く上げて大きな歩幅で歩きながら、顔と腕の動作をより大きくして続ける。ここで、モルモルの演奏は徐々にリズミカルになっていく。踊り手は小さく跳ねはじめ、やがて大きく跳ねながら進む。大きく跳ねながら空中で口を大きく開け、天に向かって顔を仰け反らせる。激しく、リズミカルなモルモルの演奏が空気を満たし、ごうごうと燃え照る焚き火のゆらめきと相まって、人々の体と心をどこまでも昂揚させ、忘我させ、一つにする。

パジャモ族は生命を授けてくれる存在として空を信仰している。そして、モルモルは天まで届く響きを生み出す唯一の楽器であるとされているのだ。ちなみに、モルモルは高らかな声(声を意味するモルを二回続けることで強意が成される)を、ンジャ・ピパパはピパパへの贈り物(ピパパはパジャモ族の創造主、天の神の名前)を意味する。

(空島出版『文明のはなし』より抜粋)


※画像は1.モルモルの本体 2.指輪を嵌めた演奏者の手 3.金属塊を底部から見た様子、を簡単に描いたもの

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by ototogengo | 2010-02-17 14:15 | 空島出版

石榴の少年

ようやくその石榴は割れたが、小さな果肉がたった六粒入っているのみだった

恥ずかしくて仕方なかったのか、割れ目がみるみるうちに塞がり、彼は頑なに皮を閉ざしてしまった

やがて、仲間たちは次から次へと落下していき、ついに彼の順番がやって来た

そうして地面に叩きつけられても、外皮が再び開かれることは決してなかった
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by ototogengo | 2010-02-02 00:03 | はなし

果実の心臓

一粒のさくらんぼの心臓を持った男が、一つの洋梨の心臓を持つ男に叱られている

あまりこっぴどくやられると、実が弾けてしまう

果柄と果肉がとれて種だけになれば、彼も流石に生き永らえられまい

「お手柔らかにお願いしますね」と、一玉のみかんの心臓を持つ部下が、叱る上司に注意を促した
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by ototogengo | 2010-02-01 02:20 | はなし