中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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<   2011年 09月 ( 2 )   > この月の画像一覧

『彼の頭の山』

緑で埋め尽くされた彼の起伏に富む頭は森というよりも山だった。樹々の葉は繁り、幹は節くれだって捻れるか、ずうっと高く真っ直ぐに伸びていた。幾層にもなった落ち葉や苔やきのこでいっぱいの土の芳しい香りで満ち、時に動物の匂いが混じり合って漂ってくる。河が流れ、せせらぎが、滝のごうごういう響きが、風が枝葉を擦らせる音と分離して同時に聴こえる。
和やかで色彩に富んだ春を、粗野なまでの生に溢れかえった夏を、ゆっくりと豊かに深まった末で俄かに過ぎ去る秋を、裸んぼうで雪の降り積もる冬を幾度か越えて、彼の表情はますます穏やかになっていく。その両の眼は鉱物のように静かで、しかも永遠にも通じる豊かな輝きを湛えている。そうして幾百年かが過ぎた頃、頭の山は全身に行きわたり、ささやかにいつまでも微笑んでいる彼を不動にした。
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by ototogengo | 2011-09-21 03:42 | はなし | Comments(0)

『宇宙きのことその周辺』

宇宙空間に生息するある種のきのこは群れを成して菌糸のかたまった中心の一か所から全方向へ遍く柄を伸ばし傘を広げ、多彩で巨大な八つ手の実にも似た球体を形づくる。透きとおった翅が真珠のように淡いプリズムを放つたくさんの小さな羽虫や蜉蝣(かげろう)、光り輝く白や黄、赤白や青白の斑点で銀河に擬態した黒く透明な髪切虫、金属光沢のある皿のように平たい甲をもつ金銀銅の天道虫たちがそれに惹かれて集まってくる。その小遊星にも似たきのこの集合体は天王星と海王星の間に点在し、漂っているという。
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by ototogengo | 2011-09-20 12:46 | はなし | Comments(0)