中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、音楽、絵、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。空島出版主宰。


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<   2013年 12月 ( 3 )   > この月の画像一覧

『花期の長い火花』

今日の昼間、中庭にある炉で鉄を熱しては、台に乗せて金槌で叩いた。赤白くなり、半ば透きとおるまで熱くなった鉄の塊を次から次へと替え、合計で何百回も何千回も叩いた。わたしはそうしているといつも、叩く度に想定不可能な動きを見せて飛び散る火花の美しさに惹き込まれて無我夢中になり、時間を忘れる。
ところで、空気の乾燥と無風のためか、今日の火花は異常に花期が長く、無数の点や線となって飛び散ったそのままの姿で空中や地面にとどまった。それらが燃え移るのを危ぶんだわたしは、人の通りそうなところや草の生えているところなどに水をかけて消火した。しかし、危険にならないであろう火花はなるべく多く残すようにした。夜になってもそれらが消えなければ、大した見ものになるだろうと考えたからだ。昼日のなかでは幾分見えにくい火花が、夜闇のなかで鮮明に見える様子をわたしは想像したのである。
やがて、夜がきた。その時までに、見落として消し切れなかった火花が上着に二、三の小さな焼け焦げを作っていたが、それだけの甲斐はあった。残された火花は、ほとんど衰えることなく熱と光とを保っていたのである。様々な明度と白~黄~橙の濃淡をもった輝く点や線が中庭の一角に密集し、闇のなかからくっきりと浮かび上がっていた。それこそ花が咲くような、あるいは小さな飛沫が散るような、またあるいは風にそよぐ稲穂のような様子をして。わたしは注意を払いながら、地表近くの火花だけに水をかけて消火した。そのあとで、ビニールシートを地面に敷いて仰向けに寝転がったのである。
そこから見える光景は想像を軽々と超えるものだった。ところによって密度の異なる火花の点や線の広がりは、流星や彗星が数多く降る最中で静止した星空を想わせた。そして、その向こうには本当の星空があったのである!澄みわたった冬の夜空には星ぼしが火花と同じくらい多く瞬き、火花よりも色は淡いが、ずっと玄妙な色みと光り方をしていっぱいに広がっていた。さらに、時期が良かったのか、流れ星の静かにすべっていく様子が頻繁に見られた。こちらで星が流れはじめた一瞬後にあちらでも流れはじめる、もしくは一斉に幾つかの星が流れるときも何度となくあったほどである。視える宇宙と視えない宇宙とが二重写しになっている…夜空の星ぼしと火花の群れを遠近(おちこち)に見ながら、わたしはふと、そんなふうに考えた。宇宙というものは人が目にする夜空よりも、途方もなく広い。そのような宇宙にある、普段は視えぬ数え切れない星ぼしのほんの一部がこれらの火花の群れとなって顕れている…。わたしは人智の及ばない宇宙の広さ、そしてその密度を想うと気が遠くなった。恍惚と形容してもいい、快さに満たされた眩暈(めまい)を覚えたのである。
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by ototogengo | 2013-12-19 20:47 | はなし

「本当は」 作詞・作曲/中島弘貴(作詞協力/星山可織)

言葉ではない波紋が伝わって
動物や植物と意思を通わせる

本当はあるんだ 顕れより密に
知っていることは世界のほんの一部

宇宙は宇宙を数知れず孕んで
一つ一つの活動にたゆたう

布団のなかで体温が後をひく
瞼の裏で星たちが瞬く
暗黒がふくむ何千の色を視る
現実の奥に隠れたものを読む

うたわれないうたがあちこちで響いている
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by ototogengo | 2013-12-17 21:35 | 歌詞

日影丈吉『暗黒回帰』序文

幼い頃、枕に小さな頭をのせて眠りに入る前に、色とりどりのビーズ玉を撒きちらした夜空が、きまって見えた。私はまだ眠っていないはずだった。が、完全に目がさめていたか確信はない。瞼の裏が無限大の闇をうけ容れ、そこに広がる粟粒大の光は、万華鏡式に収縮拡散する光の残像ではなくて、無数の天体のように固定していた。その発光ビーズ玉は銀河ほど遠くにあるらしい。それを見るのが楽しく、しばらく見ているうち眠ってしまう。そのうち、その賑やかな色の点点の集団のむこうに、まだ底知れぬ遠くまで続いているらしい闇が、すこしこわくなり、いつも変わらぬビーズ玉宇宙まで、光度の落ちた古電球のように、すこし淋しく、同時に退屈に思えて来た。それまでに何ヵ月が何年が経過したか記憶にない。あるいはもっと短い期間だったかも知れない。だが、そこに退屈を感じだすと、それは二度と見られなくなった。
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by ototogengo | 2013-12-15 00:54 | 本や音楽などの紹介