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中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、絵、音楽、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。


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詩 92

8月17~20日に書いた三作。


「世界」

風 ゆらして ふるわせて はためかせて うずまかせて なみだたせて ああ 涙だ

風 ささやかせて うならせて ほえさせて さけばせて かたらせて そうか 歌だ

何かに呼ばれて別の何かが応える 風も 涙も 歌も すべては呼応で すべてが問答



「一体」

過ちを認めなければならない
過ちを正さなければならない
それらを実行できなくても 罪にはならない
だが 罰は執行される そう 磔にされるのだ

常に認めなければならない?
常に進まなければならない?
それもまた 罰の執行 そう 全ては罰される

罰を認識し 分類する
そのうえで わたしたちはどの罰を選ぶ? どの恵みを選ぶ?



「原動」

世界のすばらしさには永遠に追いつけない
せめて それに近づけるよう 豊かになれ
あらゆるものの中心に虚しさがある
あらゆるものの果てに虚しさが
たぶん それらの虚しさは満ちすぎているせい
同時に こちらがあまりにも 貧しすぎるせい

世界は巨大で 我々は矮小
だから 我々は満たされてはならない
せめて 虚しさの力学により 豊かになれ!

# by ototogengo | 2018-08-20 02:09 |

詩 91

8月15~17日に書いた三作。


「やぶれた反復」

びっしりと結露したガラスのコップのなかで
溶けてすべった氷たちが からんと鳴ったよ
激しく踊りつづけて熱をおびた空気のなかで
昼が長びくように傾いた この惑星のなかで
渦を巻いた星の河の中心から外れたところで
宙に浮かぶ泡が孕む 無数の煌めきの一つで
その巨大な泡は結露したコップのなかにある
水に浮かぶ氷のなかにある 気泡と同じなのかな



「虚実」

欠片を失いつづけた
ああ どこへ行ったのですか
もう 二度と拾えない
失いつづけながら得た
悲しみながら 見えないものたちを捏ねあげ 建てる

むしろ 内にも外にも 穴を増やし 広げ
わたしたちは喪失を得る
見えないものたちを選んで
祈りと一体になった 捏ねるをする 建てるをする
失いつづけないかぎり 二度と得られなかった

地上に透明な樹を建てる
夜闇に影の大河を建てる
内面に風の結晶を建てる
虚空に具体の夢を建てる
それらすべてを無数の橋でつなぐ



「死と再生」

わたしたちの精神の豊かさは わたしたちにとって 今現在の 世界の豊かさそのもの どうして それを破壊するものどもを許さねばならない? どうして それに加担せねばならない? 気が遠くなるほど くり返し くり返し 殺されながら

混沌の黒や白と 単純な黒や白は まったく違う 混沌は真珠のように 無限の色を移ろわせて わたしたちは その光を取りだして遊ぶ 光をめぐらせる その命を育むように 光と闇そのものになって 光と闇をつつむ空間になって 生きるのだ

わたしたちは単数 わたしたちは無数 虹のように 幻にして現(うつつ)
それでも 確かに触れている!

# by ototogengo | 2018-08-18 00:31 |

詩 90

8月10~13日に書いた二作。


「たえだえ」

耐えざるをえないことが多すぎて それ以上は耐えられなかった
しかし それに耐えられなかった自分が耐えがたかった
ああ 耐えることと耐えないこととが追いかけあって
やがて 生きることが耐えがたくなって

あなたがたは どれほど多く耐えてきたのですか
どれほど多く耐えられるのですか
耐えている自覚があるのですか
いつまで耐えられるのですか
息が絶えるまで?

子供のころの積み木遊び 苦労に苦労を重ねて 積み上げて
完璧に仕上げた その瞬間に自分で壊す やはり完璧に ばらばらに
ならば 苦労に苦労が重なって 複雑に積み上がった人生を壊すのは誰?
すると 息が絶える

そのようにして 命を絶やされないために
もはや わたしは これ以上耐えたくない
生きつづけるために 耐えてなどいられない
――今は ただ一つだけ――
耐えられないという状態だけを 耐えましょう



「へんせい」

透きとおる鉱石から木々が生えて
その木々から虫や苔や茸が生えて
その虫や苔や茸から雫が立ち昇り
その雫の数々は星たちを出産して
その星たちが透きとおる鉱石をまき散らす

透きとおる鉱石を波紋がゆらして
そこから生える森林がざわめいて
ざわめきが風になり嵐に変わって
稲妻が横たわって分岐して 光る河になる

海にそそいで 煌めく波になって
飛沫を散らし オパールになって
玉滴石になって 陽に照らされて
火炎を放って 火炎は蝶々になって そう

赤や黄や白や青や緑の翅で羽ばた
いて 海をわたって花と同化する
花は鳥と同化して 大地とも同化
して 鳥は空と同化して 大地は
透きとおる鉱物と同化して それ
らは同時に異化しあって 同化し 異化し

# by ototogengo | 2018-08-16 02:09

詩 89

8月9~10日に書いた二作。


「寄せては返す加速のなかで」

さまざまな物事を撚りあわせて
いろいろな運命を溶かしこんで
狂気はあまりにも緩慢に進んだ

これが狂気だと気がついたときには もはや遅い
はじめから巧みに仕組まれていたかのような完成
そう 陥穽 たぶん 誰に謀られたわけでもなく

引き返すことはできない
解きほぐすことも不可能
ああ 複雑すぎる 硬すぎる 大きすぎる

狂気が加速する
めくるめく世界がこぼれおちていく
そう こうなるべくして こうなっただけのこと


そう 何もわからなくなるまでは抗ってみせる

※撚(よ)りあわせて、陥穽(かんせい)



「純化」

生きる目的が一つ また一つと欠けて
生きることだけが 生きる目的になる
生きることは好きですか?
食べたり眠ったり繁殖したりすることは?
ああ それだけでは足りないと思うのです
ああ なぜでしょう いったい 何を望んで?

わたしたちは不純なのでしょう
純粋に生きるだけでは足りないのですから
不純という自由があるからこそ
わたしたちは時間と空間を超えて遊べるのでしょう
たしかに 自分自身さえも超えて
そうでなければ 人生という牢獄に とても耐えられない

# by ototogengo | 2018-08-10 02:13 |

詩 88

8月7~9日に書いた二作。


「傾斜」

頭のなかで渦を巻く音楽
その鳴りつづける無彩色がわたしを狂わせる

その音楽は自動で鳴っている
その止め方は全くわからない
その鳴りは自動で感じられる
その意味は全く読みとれない
痛くはない 苦しくはない それはただ わたしを壊していく

頭のなかの無彩色
頭のなかの渦巻き
それが世界を塗り変えるとき わたしは終わるのだろうか
鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 生る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 成る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る 鳴る……



「じせい」

感覚によって釘づけにされて 感情によって磔にされて
自分が自分でしかいられない その途方もない恐ろしさ
思考までもが それらを推し進めて 強固にして
世界までもが それらを凝り固めて 狭く 狭く

わたしたちの心は耐えることができなくて
痙攣して叫びつづけた 気が狂うくらいに
反響に反響が重なって 混沌が駆りたてる
わたしたちを殺す場所へ ここでしかない どこでもないところへ

ここにしかいられない!
だからこそ この場所を拡張せよ!
わたしたちは 今のわたしたちとともには生きられない
さあ そこまで行こう そのあとで あそこまで行こう
そうしなければ 始まりの場所も その先の場所も 何もわからないから
自分に殺される前に自分を壊せ さあ 思いきって さようならをしよう

おはよう!
はじめまして!

※磔(はりつけ)

# by ototogengo | 2018-08-09 01:11 |