中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、絵、音楽、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。


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詩 78

7月16~18日に書いた三作。


「冬虫夏草のような」

望みを絶たれるたびに わたしに穴が開く
今や 大小さまざまな穴だらけだ
あなたも きみも そうではありませんか

それらの穴から種々(くさぐさ)の 菌類の子実体が生える
それらの先端は淡く 黄や赤や緑や紫に色づいて 粒状や粉状の子嚢果で覆われて
風が吹いて 胞子たちが光りながらたなびく わたしたちの穴が高く 低く 声をあげる

ああ それらのきのこたちは わたしたちに寄生していたのか
それとも わたしたちの本体が それらなのか
それとも わたしたちは その両方?
それとも その両方をつつみこむ全てが わたしたち?

きのこたちを根元から 途切れないように取りだして 標本にしましょう
それらを研究して確かめましょう
たくさんの穴と そのなかのたくさんの空洞が わたしたちに残される
目に見えぬ菌糸たちも一緒に



「内外」

どくどくと 怒りに塗りつぶされて
人形のように 身も心も踊らされる

すべての感情が それぞれのやり方で わたしたちを濁らせる
まるで 湖に石を投げたあとのように 事件が わたしたちのなかに眠っていたものをゆりおこして
透きとおったまなざしで その現象をつかまえたら
わたしやあなたのことが どれほど多くわかるだろう どれほど深く
どのような感情にも 無限に近い種類がある それは複雑な混合物
まるで 鮮烈な夕焼けのように 数千もの色が乱舞して 時とともに めまぐるしく移り変わって

自分の醜い踊りを じっと見ている
それを美しく変えようと誓いながら

ああ 外は夜



「不在」

生きることを愛する才能があるものは幸せになれる
生きることを愛する境遇があるものは…
それは運頼みではないか? それは自動で決まるのでは?
生まれながらにして いや 生まれる以前から
なんという格差なのだ 神よ
あなたが正しく存在するのなら証明してください
わたしたち全員に幸せがあることを実感させてください
そうですか あなたがあくまでも不在するのなら
あなたを呪っても仕方がありませんね
誰も呪えないということは幸せか 不幸せか それとも

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# by ototogengo | 2018-07-20 01:38 | | Comments(0)

詩 77

7月12~15日に書いた二作。


「二つの文」

たった一度うたった、
ちった花をかじった、
ぬった波をすくって、
てった月がうねった

発端はいつも混沌だ



「失うまでもなく」

現実の前で失語した
現実の後で失語した
言語は現実の前にも後にもなく
ただ別の場所にあるというのに
永遠にあわいにあるというのに

言語は肉体になり精神にもなる
さあ 鱗翅目のように羽ばたかせよ 水母のように漂わせよ
星ぼしのように歌わせよ 愛のように果てしのない接近を求めよ
さあ 息づかせて巡らせよ 何ものでもないもののように

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# by ototogengo | 2018-07-17 02:21 | | Comments(0)

詩 76

7月9~11日に書いた二作。


「領地」

安楽な生活
組みたてると同時に削って
むしろ 削りに削ることで出来あがった
それは完成されすぎている
複雑に組みあわさって ぎりぎりの均衡を保って

わたしたちは疑いもせず のうのうとくつろいで
ますます 生活の骨組みを切りつめる
だが わたしも世界も不変ではない
どちらかが少しでもゆらぐだけで 崩壊が崩壊をよぶ
備えよ
わたしたちは想像によって生かされねばならないし
それによって殺されてもならない
想像の領地を探って

そうだ
陽に照らされた この一つの壁でさえ 想像を超える
風雨に削られたり汚されたりした表面よ
密な黄色い点描のような 地衣類の島々よ
小さな吸盤たちをつけて這う 蔦の枝葉よ
その泡立つような緑と白の花ばなの間を 蜂が飛びかう
この壁に限ってさえ どれほど多くの時間と空間が封じこめられているのか!



「歌」

わたしたちは誰もが絶え間なく歌っている
さあ 透きとおって 自身の歌に参入する
数えきれないほど重なりあい 響きあう歌に声なき声を加え
ひとときたりとも同じでない歌の広がりに包まれて かつ それを包んで

緑豊かな坂道をのぼる
木漏れる光と影 青空と雲 風と草と石
土はさまざまな幅のひび割れを展開し
そのうえを蟻たちが進む あちらからは子どもたちの歓声
何もかもが絶え間なく歌っている 歌と歌が応えあって

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# by ototogengo | 2018-07-12 22:17 | | Comments(0)

詩 75

7月6~8日に書いた二作。


「強制」

「死ね」と言われたなら
反論の余地もない力で そう言われたなら
わたしたちは死ぬしかないではありませんか
体も心も不完全な ヒト属の一員にすぎないのですから
「死ね」と言うのなら なぜ 初めに「生きろ」と言ったのですか
わたしは今 これまでにない激しさで
静かな激しさで あなたを憎みはじめています



「花の結晶」

癒されない傷が あなたがたを満開の花にする
それは あまりの痛みのために結晶と化し
美しく咲きつづけなければならない
それは 強さであると同時に脆さだ
ただの花のように 咲いて散ることを繰りかえせない

美しいあなたがたこそ 大切にされるべきだ
内にためた痛みが 花を粉微塵に砕くまえに
その爆発は きらめく一瞬の大輪
あくまでも美しいが むごすぎるだろう

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# by ototogengo | 2018-07-09 00:18 | | Comments(0)

詩 74

7月4~6日に書いた三作。


「絶望のさなかに」

絶望によって 過去も未来も根こそぎにされた
今こそ 現在に生きるべきときだ
急げ 現在もすでに蝕まれている
絶望は埋めつくす ことばも想像も行動も
現在の空白地帯に没入せよ そこから世界が展開する



「不可能」

美しいものをつくることが精一杯の抵抗だった
美しくない生活を送ることに対する
すべての定めである虚しさに対する

諦めたくはなかった
すべてを捧げてもいいと思ってきた
だが 生活よ 定めよ これらがどれほどゆるぎないものか

声がする 「生きずにつくれ」
声がする 「つくらずに生きろ」
声がしない「つくって生きろ」
いつも願うのは しない声を聴くことだった
それを聴いているときには願わないのに

流されつづけて角がとれ
角がとれても なお 流されつづけて擦り減っていく
それをどうしても許すことができない



「技術」

体も心も痙攣しつづけて 破滅の兆しが進む
俯瞰することも装うことも 愛することも騙すことも巧いから
最期まで やりぬくつもりだ
もっと巧くなって 破滅さえも欺けたなら
欺ききったとき それは真実になる

あなたがたは誰一人として悪くない
だけど 自分自身を責めるのは難しくないから
あなたがたが自分自身を責めないためにも できるだけ巧く生き残るつもりだ
運命そのものを相手どって
その可否さえ 運命のうちだとしても

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# by ototogengo | 2018-07-06 21:26 | | Comments(0)

詩 73

7月3~4日に書いた二作。


「浮沈」

病に侵(おか)されて火照り 横になりながらぐにゃぐにゃに溶けて
深みに引きずりこまれながら 眠りに溺れる
そう 不快さえも不定形にされて もはや 不快ですらない
空間と時間がうねうねと流動する やわらかい感触を全身に覚えて

ときどき あちこちに 痛みが光る 火花を散らして
すると 全身を目覚めが駆けめぐる
ぷかぷかと 漂っている
海のなかで 重力と浮力が引っぱりあっている
ああ また火花が咲く 



「無題」

いやがうえにも いやがうえにも 運命に痛みつけられ
ありとあらゆる道を閉ざされても
「それでも世界は美しい」と言いきれる
自ら命を絶つときがきても
「それでも植物も動物も菌類も 原生生物も細菌も古細菌も
 鉱物も空も海も すべてすばらしい」と言いきってみせる
「人生はすばらしい」とは決して言えなくても

ああ 世界は痛いほどに眩しい
まともに参加することのできない世界が

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# by ototogengo | 2018-07-04 18:38 | | Comments(0)

詩 72

6月30~7月3日に書いた二作。


「不可避 孵化飛」

わたしは張りつめて
張りつめきって 弾け飛ぶ
肉片や血や骨 光や種子や歌を
――ことばにならない歌を――まきちらしながら
痛みをへて甦るのか 痛みとともに死に絶えるのか
来(きた)るときまでは わからない 
最大の準備とは 準備をしないことだろうか

生き尽くしたい
意味からも 幸せや不幸せからも 解き放たれて
きらめく塵になって 宇宙との交合をとげる
弾け飛ぶよりも美しく
そのうえで弾け飛ぶなら なおのこと!
二つの性を超えたもの同士で
それ以前でも それ以降でもあるもの同士で

得るものと失うものを秤にかける隙もなく
運命に促されて 飛翔した 



「印」

そこに ここに あそこに
あなたにつうじる印が見つかる
ああ こんなにも 次から次へと

本当は 至るところに 至るものにつうじる印がある
しかし そのものへの 道が開かれていないとき
わたしたちは それを いつも見過ごしている
きりがないほど多くの 印にならない印たち

このこころは それほどまでに あなたに占領されているから 道
を あまねく世界に向かって 毛細血管のように 密に 四次元的
に 触手のように伸ばし ささいなものも おぼろなものも 捕ら
えて 集めて 結びつけて あざやかな印に 仕立てあげてしまう

この過集中を断ち切らなければならない
豊かに呼応する印――より自在な印――を見つけるために
この広い世界を ますます広いと感じられるように

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# by ototogengo | 2018-07-03 16:22 | | Comments(0)

詩 71

6月27~29日に書いた三作。


「傷」

擦りきれていく心

ああ 耐えつづけて
痛い 心の肌が剥がれていく
だが 耐えられなくもない

ああ さらに耐えつづけて
痛い 痛い 心の血が流れていく
だが どうにか耐えられそうだ

ああ ただただ耐えつづけて
痛い 痛い 痛い 心の骨がひび割れていく
だが なんとか耐えられるかもしれない

ああ ひたすらに耐えつづけて
痛い 痛い 痛い 痛い 心の内臓が破れていく
だが もしかすると耐えられるんじゃないか

ああ 耐えているかどうかわからず
痛い かどうかもわからない
心が なくなって わたしたちは死んだ

ああ 心は見えない



「街灯たち」

くらい夜道をあるく まっしろな火の玉が左右にならぶ
それらはさかさまの線香花火 色とりどりの細い火花
を数かぎりなく ちらしながら あるく動きとと
もに その火の玉の数々がゆれる 色とりど
りの細い火花も ああ ゆれている 坂
道のてっぺんから 左右にわかれる道
が見えて まっしろな火の玉がふえ
る 色とりどりの火花もふえるか
ら まるで たんぽぽの綿毛の
ようで 風にふかれて飛びた
ちそう 坂道をくだりなが
ら あるく動きとともに
火の玉のふるえが大き
くなる 火花の動き
は激しくなる だ
が いつまでも
それらは飛び
たたないし
落ちない

空へ






「大都会で 小宇宙で」

ああ こんなにも多くの人びとのなかで
あなただけが ひときわ輝いて
ああ こんなにも多くのものたちのなかで

あなたは神のように遍在し
人びとやものたちの わずかな裂け目をとおって流れこんでくる
あるいは あなたは世界よりも巨大で
建築群やそれをつつむ空気をも おおいつくしているのだろうか

(なぜ あなただけが なぜ)

すべての現実は幻 すべての感覚は錯覚
ならば この愛もまた 現実であり実感
確かに これほどまでに痛い
あなたの不在が呪いのように 痛みと愛を増幅させる
あなたのせいではない あなたとわたしの両方の 実在と不在のせい

(だが 誰もが実在と不在の混淆だ
 なぜ あなただけが なぜ)

輝きにつつまれて 輝きにつらぬかれて

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# by ototogengo | 2018-06-29 22:44 | | Comments(0)

詩 70

6月24~26日に書いた二作。


「むげん」

水晶、紫水晶、黄水晶(きずいしょう)、薔薇水晶、庭園水晶、虹入り水晶

さまざまな水晶のひとつずつに さまざまな銀河がひとつずつ閉じこめられて

いろいろな星ぼしが輝いて 散らばったり渦巻いたり歌ったりしている

それらの水晶たちは巨樹に生(な)った木の実たち

やはり銀河を閉じこめた鉱石でできた とりどりの鳥たちや獣たちが食べにくる

その種子は彼らの体のなかで発芽して 伸びて分岐して広がる

その見事な樹は 水晶でできた木の実たちをつける

水晶、乳水晶、煙水晶、蝶形(ちょうけい)水晶、山入り水晶、水晶入り水晶

いろいろな石英のひとつずつに いろいろな宇宙がひとつずつ閉じこめられて

さまざまな星たちが光って 集まったり連結したり彩雲をつくったりしている

やはり銀河を閉じこめた鉱石でできた くさぐさの鳥たちや虫たちが啄ばみにくる

その種子は彼らの体のなかで芽ぶいて 伸びて分岐して広がる

その精妙な樹は 水晶でできた木の実たちをつけ……

…………………………………………………………………………

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「過冷却のように」

家のなかに 独りきりでいる
時間が わたしを痛めつける
親友は自死し 想い人は生死不明
さみしいと 感じるのは 自分自身が 空虚なせいだ

人々と過ごすこと 町の喧騒にまぎれること
そのようにして 虚ろを満たしたくはない
それは虚ろによって 虚ろを満たすことだ
かなしみよ 痛みよ わたしを 切り裂いて 切り 刻め

やがて 耐え切 れな くなって
空虚 の臨界か ら 切なる願いが やってく る
美への憧 れが やっ て くる
いっせいに押し寄せる!激しく大きく高く!命をもった水晶の海が!

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# by ototogengo | 2018-06-26 22:35 | | Comments(0)