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中島弘貴
by ototogengo
中島弘貴
多様なものごとと関わりながら世界を広げて深める。文筆、絵、音楽、写真をやります。

2011年に解散したバンド“立体”では、うたとギターを担当。


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2011年3月23日

光が半ば固体化した石灰質の漆黒の隙間を縫ってまっすぐに降りそそぐと、大地のあちこちを光の点たちや単細胞に似た小さな形たちが照らしだす。それは染みのようだが、こんなにもうつくしい染みを見たことがない。

その光の染みの一つ一つから瑞々しい黄緑の芽が生まれ、陽光にそって真上に、あるいは斜め上に伸びていく。樹と蔦の合いの子、緑色の幹と枝や褐色の蔓(つる)を持つ多様な植物たちは決してどっしりとはしないが、確かに成長していく。あるものは花を開きながら、あるものは丸い実や綿毛をいっぱいつけながら、分岐する枝や茎を螺旋状に伸ばして葉を繁らせる。

ついにそれらの植物の幾つかが漆黒の外側に達する。その闇の土壌に種が落ち、次の世代はそこに根を下ろして空へ向かう。樹木に草やシダや苔を加えてより豊かに、より力強く育つ森は実にうつくしい。

雨が降り続き、河や湖が現れた。動物も、鳥も虫も菌類も現れた。彼らが長く暮らすなかで漆黒が少しずつ少しずつ分解されて香りのいい土に生まれ変わったとき、光の染みから芽生えた植物たちもこれまで通り、あるいはこれまでよりももっと健やかに育っていた。
by ototogengo | 2011-03-23 19:00 | 言葉
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