中島弘貴
by ototogengo


『しっぽ』

何週間も続けて座り仕事をしていると、尾骨が痛み始めた。このままだと、近いうちにしっぽが再び生えてくるだろう。職業病というやつだ。
日本猿のように毛深くて短いもの、蛇のように鱗のある長いもの、西洋の古い絵にある竜のように螺旋を描くもの…これまでに様々なしっぽを持ってきたが、生活の上での不便こそ多けれ、便利なことは殆どなかった。何かと物に引っかかる、座ったり寝たりするときの邪魔になる、服に押し込むのが大変である、人から奇異の眼で見られる、などなど。そのうえ、それを取り除く作業は厄介極まりないのだ。医者にかからねばならないし、薬も飲まなければならない、さらには食事療法を一月以上せねばならない。考えるだけで気が滅入ってくる。まあ、どんなしっぽが次に生えるのかには興味があるし、それをさすったり掴んだり、その不思議な動きを眼で追ったりすることがそれなりに愉しくはあるが。
だから、私はこれから数日を外で、あまり腰を掛けないようにして過ごすつもりだ。経験上、そうすればしっぽの生える危険は遠ざかるから。
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by ototogengo | 2013-01-12 12:56 | はなし | Comments(0)
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