中島弘貴
by ototogengo


『風邪をひく』

2月12日

晴れたので、掛け布団を干して家を出た。夜に帰宅して、すぐに室内へ入れた。
その布団を掛けていざ眠ろうとすると、どうも様子がおかしい。太陽のいい香りがするのは当然だが、じんわりと微熱を持っている。それだけならむしろ安眠を誘うのだが、のべつ幕なしに震えてもいる。今日は冷たい風が強く吹いていたので、布団が風邪をひいたのかも知れない。そういえば、夕方からの冷え込みも随分と厳しかった。
今のところ、布団の症状はさほど重くない。明日になったら回復しているといいが、悪化して咳やくしゃみまでするようになったら大変だ。念のため、暖房を点けたままで眠りにつく。

2月13日

暖房の甲斐あってか、掛け布団はすっかり良くなった。
安心して読書をしていると、折り癖が付いているように、特定のページが事あるごとに開く。と思えば、活字が動悸をうって膨張と縮小とを繰り返し、時どき挿絵が突発的に巨大化しては元に戻る。どうやら、掛け布団の風邪が本にうつったらしい。
放っておくと、本棚の蔵書に次から次へと伝染するだろう。処方を考えたが、タオルで包めばそれに風邪がうつりかねないし、温水につければ本が駄目になる。そこで、「風邪薬」という文字を栞(しおり)に記し、真ん中あたりに挟んで丸一日寝かせることにした。恐らく、これで大丈夫だろう。今日のところは安静にさせて、他の本を読むことにする。
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by ototogengo | 2013-02-13 21:59 | はなし | Comments(0)
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