詩 21

3月3~4日に書いた三作。


「傷のように刻印された」

傷のように刻印された一つの思い出
日々流れこむ記憶の洪水のなか、
もまれて削られ、藻(も)や葉や泥にまみれ、波や泡や光に飾られて、
輝く石板となった一つの思い出、大洋のなかで流されつつ浮かんでは沈み、
その刻印はますます読みやすくなって、ますます読みにくくなって



「あるところに」

蜻蛉(とんぼ)たちは堕ちておらず、昇ってもいない
なぜなら、どこにも方向はないから
どこから見ての上? 何ものにとっての下?
どのようなときの?
四次元のなかの一点を定めなければならない
あなたもわたしも、そのような小さな一点でしかない
かりそめの、与えられた一点

その点を動かす、増やす、
それらの複数によって建築する
点はゆれている、生まれては消えている、
いつでも、いつでも
どこかに、不動の石たちが飛びまわるところがあるのではないか?
または、石たちが生きものをうみだすところがあるのではないか?
あるいは、きみが幸福でいられるところが?



「不在」

きみは宙づりになった
きみはあらゆるところにいる
まちのなか、山のなか、ことばのなか、空気のなかにさえ
想いをはせると、きみはどこからでも立ちのぼる
それとも、どこからでも立ちのぼるからこそ、きみに想いをはせるのか
きみは口をつぐみつづける
だからこそ、好ましい存在でいつづけられるのか、
はるか彼方にある星雲のように?

不在は、わたしたちには大きすぎる、小さすぎる
誰のことも、わたしたちのための幻に変えてしまう
すがり、せがみ、ゆがめ、あがめ
わすれ、わすれたくない、わすれていく、わすれていく、

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by ototogengo | 2018-03-04 19:43 | | Comments(0)
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