中島弘貴
by ototogengo


詩 45

5月1~3日に書いた三作。


「単位の更新」

小ささの大きさを知ることによって、
大きさはさらに大きくなる
無彩色の彩りを知ることによって、
彩りはさらに彩られる

半透明の葉虫を指に乗せる
その煌めきは黄金郷と並び、
その動くさまは精巧な機械のよう、
その生命はまるで宇宙 ああ、
宇宙が飛びたつ!
飛び去ってしまった



「いどう」

草や花よ、わたしたちはあなたたちではないだろう
虫や鳥よ、わたしたちはあなたたちではないだろう
しかし、草の芽ぶきや花のほころびをうれしく感じる、
虫の羽ばたきや鳥のさえずりをたのしく感じる
その感覚は、それらが美しいためだけではないだろう
そこには親しみがある

わたしたちはあなたたちではないだろうが、
わたしたちとあなたたちはお互いに浸透しあっている
わたしたちの一人一人は、あなたたちの一つ一つは、まるで海、
それぞれに異なる波や輝きや歌や生態系をもつ
しかし、わたしたちもあなたたちも
見えない同じものに支えられている



「対峙、自他ともに」

ハエトリグモの円(つぶ)らな瞳が八つ
それらはまるで宝石
漆黒の、あるいは深緑(しんりょく)の、あるいは紫紺(しこん)の、
あるいは暗紅(あんく)の、あるいは藍色の
わたしたちが見つめると、
クモもまたわたしたちを見つめる
わたしたちが不用意に近づくと、
クモは八つの宝石とともに逃げ、物陰に隠れる
わたしたちは独りきりになる、周りの世界さえ遠のいて
そこからだ、その宝石たちが宙に浮かびはじめるのは
そこからだ、それらがわたしたちの内と外を巡りはじめるのは
宝石は次から次へと増える、次から次へとわたしたちのなかから現れる
百に増え、千に増え、万に増え、億に、兆に、京(けい)に増える
ぶつかりあう、つながる、つらなる、爆ぜる、穴になる、雲になる、また生まれる

物陰からハエトリグモが再び現れ、ぴょんぴょんと跳ねる
すると、わたしたちを巡る星たちの一つ一つから、今度はハエトリグモの毛深い体が生える
八本の脚と二本の触肢(しょくし)も生える
それらの幻は先ほどよりも精彩を増して

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by ototogengo | 2018-05-04 17:39 | | Comments(0)
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