中島弘貴
by ototogengo


詩 49

5月9~13日に書いた三作。


「ひとりで」

暗闇のなか、全身全霊が呼吸する
多彩な淡い輝きをはなつ銀河がいくつも巡りながら、
あなたの内と外を行き来する

静寂のなか、湧きあがる響きを掬(すく)う
金や銅の線や点が上下左右や遠近(おちこち)に弾けて、
美しい和音や旋律をくり広げる

つつまれながら目を閉じて
時空のあわいで浮遊して



「変身」

魚は小さくて透明な稚魚から
なんと見事に変身して成魚になるのだろう
蝶は地を這いまわる芋虫から
なんと見事に変身して舞いあがるのだろう

わたしたちは劇的に変身できないものたち
だが、わたしたちの心はつねに変身が可能
生涯をかけ、魚や蝶よりも大きく変身する
変身する、変身できる、はずだった、はず
だ、なのに、本当のところは、みじめな有
りさま、それは何のせい?誰のせい?自分
のせい?すべての?わからない?わたした
ちは果てしなく変身しつづけられるほど強
くない、だが、わたしたちの体と心は叫ぶ
、「もっと!もっとだ!限界まで、限界を
超えて、うたわせてくれ!おどらせてくれ
!わたしたちのなかにある闇の海、そのき
らめく波のかずかずが広がる大海原をくみ
だして、くみつくして、色とりどりの火花
のような結晶をまき散らしたい!海と空を
感情の嵐によって撹拌してばらまいて、ぶ
つけあわせ、理性の無数の手によってつか
んで、組みあわせるんだ!すると、その結
晶のかたまりは透明な稚魚になり、やがて
色と模様のついた大きな成魚になる!別の
結晶のかたまりは他の結晶たちを食いあら
す芋虫になり、それが金属光沢をもつ蛹に
変わり、やがて真珠色の鱗粉をたなびかせ
ながら空を舞う蝶になる!さらに別の結晶
は卵から蜥蜴や鳥や珊瑚や貝やヒトデにな
り、あるいは種から若木になって針葉樹や
広葉樹の大木になり、またあるいは輝く胞
子から羊歯やきのこや苔や海藻になる!そ
れらは光と影の交わりや移ろいのなかで結
婚し、出産し、ますます広く、高く、密に
なり、果てしなく底知れないものになって
、わたしたち自身を驚かせる!恍惚とさせ
る!妙なるうたにする!美しいおどりにす
る!隕石が降りそそぎ、彗星が降りそそい
で、地震や洪水や噴火をひきおこす!恒星
が膨張し、光と熱を増し、大きな、途方も
なく大きな爆発となって、それでも動物た
ち、植物たち、菌類たち、鉱物たちは死な
ない!むしろ、それらはさらに乱舞し、結
婚し、出産し、幾億、幾兆、いやそれ以上
もの色彩の、形状の、運動の、音楽の、光
線の、生命の奔流となってすべてを貫いて
、変身し、分裂し、合体し、神秘の森の…」

※撹拌は(かくはん)と、蜥蜴は(とかげ)と読みます



「いつも早すぎる」

虚ろであることは苦しいから、
すぐにでも埋め合わせたくなる
孤独であることが苦しいから、
いつも誰かと居たくなるように
きみは空っぽの生を死で満たしたかった?

待つんだ、虚ろと孤独を引き受けて
少なくとも、痛みと苦しみがここにある
それらは実(み)、それらは芽
今はできるかぎり感じ、考え、
自分から兆すものを、季節から兆すものを、
激しい嵐のなかで暮らしながら育(はぐく)む
終わりがいつ訪れるかはわからない、
終わるまでは何もかもが無意味に思えるかもしれない
だけど、意味の有無は問題じゃない
意味は有るものではなく付けるものだから
むしろ、すべてに意味が決まっていたら恐ろしいだろう!

いつか世界が晴れたら、季節が変わっていることに気づくはずだ
嵐が思いのほか早く再来することもあるだろう
だけど、そのときには虚ろと孤独による避難所が育っている
それは全く違う嵐で、避難所が役にたたないかもしれない
だが、そこはいくらか見晴らしがいいだろう、
窓があるかもしれないし、高台にあるかもしれないから
嵐が来ては去り、嵐が来ては去る、
嵐ばかりの人生かもしれないから、
さまざまな嵐のすべてをおもしろがれるようになれたら!
人生をどこまで愛せるようになるか、
世界をどこまで愛せるようになるか、
それを試しつづけるのも悪くないんじゃないか?
死に急いだきみへ、わたしへ
死に急ぐあなたへ、みんなへ

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by ototogengo | 2018-05-13 11:28 | | Comments(0)
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