中島弘貴
by ototogengo


詩 54

5月20~21日に書いた三作。


「大切な人たちへ」

あなたがいなくても世界はすばらしい
あなたがいれば世界はもっとすばらしい
あなたと共に生きられれば、もっともっと…



「痛みについて、痛みによって」

強い心の痛みは癒えたようで癒えない
それは心の奥で眠りにつく、見えない核をもって
それを思いおこさせる出来事と遭遇したとき、痛みは目覚める
それは緻密な樹枝に似た触手を放射状に、急速に広げる

(痛い、痛い!わたしの心と体を痛みが駆けめぐっている! わたしの心のあちこちに、過去に受けた痛みの種がいくつも眠っている。きみが亡くなったときの、あなたと別れたときの、夢に破れたときの……他にも、他にも。一つの種が再び大輪の花を咲かせたとき、他の種たちもそれに呼応して花開いた! 痛い、痛い! おそろしい痛みたちが引きあい、結びつきあって、わたしを塗り変え、世界を塗り変えてしまう! わたしの心のなかに避難所がなければならない。あるいは、わたしの体のそとに避難所がなければならない。それは枯れたホオズキの実のなかの――あるいは、そとの――空洞のような場所。そこから見ると、痛みの精巧な網の目さえもが美しく思えるような場所。痛みを感じながらも、痛みがその意味を変えるような……)



「忘れて溶けて」

会えなくて、あなたの顔も身体(からだ)も忘れてしまった
だから、あなたは明け方の鳥たちのさえずりに溶けている、
雲の流れる青空に溶けている、
波の寄せては返す夜の海に溶けている、
眠りながら見る夢に溶けている、
それらわたしのすべてに溶け、世界のすべてに溶けている
あなたと出会う前後で、何もかもが決定的に変わってしまった

わたしたちは誰しも、二度と引き返せない
いつだってそうだ、いつだってそうに違いないのだが

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# by ototogengo | 2018-05-22 00:43 | | Comments(0)

詩 54

5月19~20日に書いた三作。


「美しすぎること」

きみが死を自ら選んだとき、わたしは泣かなかった
もしかすると、それが信じるに足りたから
あなたがわたしを愛したとき、わたしは泣いた
もしかすると、それがとても信じられなかったから
それは美しすぎて、この地上に長くとどまれなかった
現実に耐えられず、壊れなければならなかった
だけど、美しすぎることがおきた、
今もどこかでおきている、
それだけですばらしいことなのかもしれない



「孤立」

危機につぐ危機を超えるたびに、
わたしたちは真っ直ぐ伸びた、歪んだ、
柔らかくなった、硬くなった、開かれた、閉じた
同時に進行する複雑な変化をとげ、ますます独自の軌道をゆきながら、
光る星ぼしのようにますます離れていくわたしたち、
他にどうすればよかった?
他にどうにかしようがあった?
わたしたちの孤独、わたしたちの痛みは共通のもので、
それらによって知性と感性を鍛えあげることも同じ、
離れているからこそ、お互いに立ち、見つめあい、対話することができる 、
言葉によって、行為によって

はるかな距離は深淵、だが、ともするとそれは幻、
光速を超える瞬(またた)きを交わして通じあえたら
お互いが見えなくなる距離まで離れる前に、
お互いが宇宙の塵となって消える前に



「恋愛感情による」

恋愛感情によるすさまじい破壊
その嵐は天地を根こそぎにしかねない
広く深い海洋も、厚く積み重なった地層も、意志によって錬成した結晶も、
なんと多くが巻きこまれ、砕けて飛び散っただろう
それは何という選別、何という呼吸、何という死と再生
おそろしい無力とみなぎる力が共にあって、
わたしたちのこれからを準備する
恋愛がうまくいこうといかなかろうと
それを貴重な贈りものに変えられたら

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# by ototogengo | 2018-05-21 02:25 | | Comments(0)

詩 53

5月18~19日に書いた三作。


「ともに生きる」

あなたとわたしはそれぞれに水鏡と化して向かい合う
それぞれの観る世界を無限に映しあって
それぞれの鏡面には別々にたくさんの波がたって、
別々にいくつもの光がとおって、形も色もまるで違う、
音も香りも肌ざわりもまるで違う
お互いのみずうみが無数の飛沫(しぶき)を散らす、
その一つ一つの雫もまた鏡、
外界のぐるりと内界のぐるりとを映す
わたしたちはその雫のいくつを受けわたせるだろう
それぞれの世界のどれほどを呼応させ、鼓動させ、新生させられるだろう
絶望的ではないと信じ、できるかぎりを試みる
どうかあなたも…



「二元論の愚かさ(と賢さ)」

遠いものへの憧れは抽象的で、
近いものとの接触の具体性に壊される
遠さの弱さ、近さの強さよ

遠いものへの憧れの美しさが、
近いものとの接触の具体性を嫌悪させる
遠さの強さ、近さの弱さよ



「本当に?」

                 強いものは耐える
                耐えるからますます強くなる
               強くなるからますます孤独になる
              それは悲しいことじゃない
             孤独でなければできないことがある
            薄明るい孤独によって飛ぶ
         どこまでも、どこまでも
     高みを求めて、青を通りぬけて、
輝きを求めて、燃えつきるまで、
なぜ? 生きつくしたいからだ! 、、、 、. 、 . 、  .   


※他の全作品もそうですが、この詩は特に縦書きを想定してください

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# by ototogengo | 2018-05-19 20:44 | | Comments(0)

詩 52

5月17~18日に書いた三作。


「百億の夢たち、それよりはるかに多くの石たち」

何度何度も、石が地面を飛び跳ねながら駆けていく
そのあいだ、石と地面が接触した部分から水たまりが広がっていく、
彩りの移ろう、オパール色に輝く水をたたえて
その水は球体の断面なのだった
地下から風が吹き、それらはシャボン玉のようにふくらむ
それらは彩りの移ろう、オパール色に輝きながら漂いのぼっていく
その一つ一つのなかで、わたしたち一人一人の夢幻が育っていく、
眠りながらにして見る夢が、覚めながらにして訪れる幻が



「不平等な、あまりにも不平等な」

人間は何と巨大になってしまったんだろう
その頭は銀河のひしめきあう宇宙空間まで伸び、
その足は色とりどりに発光する生きものたちのうごめく海底まで届く、
頭頂からも足裏からも根を大きく広げて
まるで、その根が捉えられないものはないかのように
わたしたちは人間のことばかり思う、人間のことばかり語る、人間のことばかり歌う、人間のために生きる、どこもかしこも人間であふれ、何もかも人間で塗りかえられ、見通しがわるい、息ができない、
だが、人間の体もその根も空洞だらけだ
草木と鳥獣と虫魚を、もっと巨大に変えて!
菌類も原生生物も細菌も古細菌も鉱物も、もっともっと!
人間と同じくらい巨大に育ち、それぞれの透明な体が重なりあって交わり、それぞれの緻密と深遠を高めあったら!



「とても言い尽くせぬ」

わたしたちは実にさまざまな要素の、
実にさまざまな関連をもつ寄せ集め
なんと歪で不完全な寄せ集めだろう

そのなかで、ある人と出会う
その人もまた歪で不完全な寄せ集め
だが、それは完全よりもすばらしい!
奇跡的な人と奇跡的な時間と場所で奇跡的に巡りあうこと
その何重もの奇跡に、どれほど救われるだろう
ああ、どれほど
どれほど

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# by ototogengo | 2018-05-18 23:25 | | Comments(0)

詩 51

5月15~16日に書いた三作。


「ああ」

底知れないものは美しい
底知れないものは恐ろしい
だから、あなたは美しくも恐ろしい
その遥かさよ
親しめば、それらの感覚は消えるのだろうか
親しんでも尚、それらの感覚がいや増すとすれば?
緻密な脈や無数の緑色をもつ一枚のありふれた葉のように、
さまざまなリズムや無数の音色をもつ透きとおった雨音のように、
いや、それらよりもずっと豊かに、それらよりもずっと深遠に  ああ、



「奇怪な機械を理解する機会」

奇怪な機械、
それはたとえばありとあらゆる生物、
それはたとえば運命、
それはたとえば宇宙
さらにたとえれば、わたしたちは機械をつくる奇怪な機械だ、
機会をつくる奇怪な機械だ、
奇怪という概念をつくる奇怪な機械だ
これらはただの語呂合わせではない



「かわいそうなわたしたち」

8匹のヤドカリが一つの貝殻をめぐって争う
絡みあいながら、掴みあいながら、押しのけあいながら、
たくさんの鋏(はさみ)や脚をせわしなく動かしながら、
引っくり返ったり引っくり直ったりしながら
戦況はめまぐるしく変わる、
ヤドカリたちはずいぶんと長い間、飽きもせず争いつづける
ついに、一匹のヤドカリが貝殻を勝ちとる
だが、それは身の丈に合わず、結局は捨ておかれる
すると、他のヤドカリたちもその貝殻に興味を失って去る
そして、他の貝殻に対して同じようなことが再びおきる

際限のない8匹のヤドカリたちの争い
それを「かわいそう」だと思う
なぜ「かわいそう」なのか?
多くの人間も、それと似かよった状態を繰り広げてきたのではないか、
今も、あなたもわたしも 

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# by ototogengo | 2018-05-16 21:57 | | Comments(0)

詩 50

5月13~14日に書いた三作。


「痛み」

わたしたちは絶えず吹く風に削られて
      絶えず降る雨に穿たれて
      何度ちぎり取られたか、
      何度くずれ落ちたか

それらの切れ端はどこへ行った?
それらの破片はどこへ行った?
どこでもない場所へ消えた そして、
別の場所からしみ出して、鍾乳石をつくった
なぜなら、わたしたちがそれらの痛みを覚えていたから

洞窟のなかで鍾乳石の数々がぼんやりと光る
青白く、降り積もった雪のように、ゆらめく幽霊のように
そのなかを、わたしたちは裸で探検する
痛くて寒いから、鍾乳石からつみとった光を身に纏う
一つ一つがたんぽぽの綿毛のような光
わたしたちが手にとると、それらは色を変える
淡い緑に、淡い赤に、淡い黄に、淡い紫に、淡い白に
それらが複雑に混じったものもあるし、青白いままのものもある
それらは温かい、だが温かすぎてはいけない
温かすぎると、石たちが溶けてしまうから



「しの対話」

生者たちが死者を何度も何度も思い出す
そのたびに死者を蘇らせ、殺し、蘇らせ、殺し、蘇らせ、殺し、
死者は蘇るたびに違う人になる、殺されるたびに違う人になる
一人の死者が何百万人、何千万人と存在しなければならないのか
これまでに存在した死者の数は全地球の砂粒の数よりも多いのではないか
全宇宙の星の数よりも多いのではないか、
銀河系には星が千億以上あり、全宇宙には銀河が何兆もあるらしいが
一粒一粒の砂が死者の「体」になったときに砂嵐がおこったら
一つ一つの星が死者の「体」になったときに宇宙が膨張したら
――冒涜です!死者を何だと思っているんですか!
――砂自体が生物の死骸であることも多いみたいです。死者はそれほど特別でしょうか?
――人間には魂があるじゃないですか!
――それでは、他の生物には魂がなくて、星にも魂がないということですか? 生物はもちろん、非生物のほとんども星くずから生まれたらしいのに。
――魂というのは心です! 心のある人間には尊厳があります!
――確かに、人間以外に心があるかどうかはわかりません。だけど、心というものはそもそも物質の……



「失われても」

自分の持ちものが何もかも失われても
友だちも家族も、すべてが失われても
自分自身は残される
それで充分なのかもしれない

最期に、自分自身の命さえ失われても
人びとも文明も、すべてが失われても
この世界は残される
山も海も、虫や原生生物の一部も、
太陽も月も残される
それで充分なのかもしれない
できるかぎりを試みたなら

最後に、宇宙そのものさえ失われても
星ぼしも空間も、すべてが失われても
名づけえぬ何かは残される
いや、残されると言えるかどうか
それで充分なのかもしれない

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# by ototogengo | 2018-05-14 01:04 | | Comments(0)

詩 49

5月9~13日に書いた三作。


「ひとりで」

暗闇のなか、全身全霊が呼吸する
多彩な淡い輝きをはなつ銀河がいくつも巡りながら、
あなたの内と外を行き来する

静寂のなか、湧きあがる響きを掬(すく)う
金や銅の線や点が上下左右や遠近(おちこち)に弾けて、
美しい和音や旋律をくり広げる

つつまれながら目を閉じて
時空のあわいで浮遊して



「変身」

魚は小さくて透明な稚魚から
なんと見事に変身して成魚になるのだろう
蝶は地を這いまわる芋虫から
なんと見事に変身して舞いあがるのだろう

わたしたちは劇的に変身できないものたち
だが、わたしたちの心はつねに変身が可能
生涯をかけ、魚や蝶よりも大きく変身する
変身する、変身できる、はずだった、はず
だ、なのに、本当のところは、みじめな有
りさま、それは何のせい?誰のせい?自分
のせい?すべての?わからない?わたした
ちは果てしなく変身しつづけられるほど強
くない、だが、わたしたちの体と心は叫ぶ
、「もっと!もっとだ!限界まで、限界を
超えて、うたわせてくれ!おどらせてくれ
!わたしたちのなかにある闇の海、そのき
らめく波のかずかずが広がる大海原をくみ
だして、くみつくして、色とりどりの火花
のような結晶をまき散らしたい!海と空を
感情の嵐によって撹拌してばらまいて、ぶ
つけあわせ、理性の無数の手によってつか
んで、組みあわせるんだ!すると、その結
晶のかたまりは透明な稚魚になり、やがて
色と模様のついた大きな成魚になる!別の
結晶のかたまりは他の結晶たちを食いあら
す芋虫になり、それが金属光沢をもつ蛹に
変わり、やがて真珠色の鱗粉をたなびかせ
ながら空を舞う蝶になる!さらに別の結晶
は卵から蜥蜴や鳥や珊瑚や貝やヒトデにな
り、あるいは種から若木になって針葉樹や
広葉樹の大木になり、またあるいは輝く胞
子から羊歯やきのこや苔や海藻になる!そ
れらは光と影の交わりや移ろいのなかで結
婚し、出産し、ますます広く、高く、密に
なり、果てしなく底知れないものになって
、わたしたち自身を驚かせる!恍惚とさせ
る!妙なるうたにする!美しいおどりにす
る!隕石が降りそそぎ、彗星が降りそそい
で、地震や洪水や噴火をひきおこす!恒星
が膨張し、光と熱を増し、大きな、途方も
なく大きな爆発となって、それでも動物た
ち、植物たち、菌類たち、鉱物たちは死な
ない!むしろ、それらはさらに乱舞し、結
婚し、出産し、幾億、幾兆、いやそれ以上
もの色彩の、形状の、運動の、音楽の、光
線の、生命の奔流となってすべてを貫いて
、変身し、分裂し、合体し、神秘の森の…」

※撹拌は(かくはん)と、蜥蜴は(とかげ)と読みます



「いつも早すぎる」

虚ろであることは苦しいから、
すぐにでも埋め合わせたくなる
孤独であることが苦しいから、
いつも誰かと居たくなるように
きみは空っぽの生を死で満たしたかった?

待つんだ、虚ろと孤独を引き受けて
少なくとも、痛みと苦しみがここにある
それらは実(み)、それらは芽
今はできるかぎり感じ、考え、
自分から兆すものを、季節から兆すものを、
激しい嵐のなかで暮らしながら育(はぐく)む
終わりがいつ訪れるかはわからない、
終わるまでは何もかもが無意味に思えるかもしれない
だけど、意味の有無は問題じゃない
意味は有るものではなく付けるものだから
むしろ、すべてに意味が決まっていたら恐ろしいだろう!

いつか世界が晴れたら、季節が変わっていることに気づくはずだ
嵐が思いのほか早く再来することもあるだろう
だけど、そのときには虚ろと孤独による避難所が育っている
それは全く違う嵐で、避難所が役にたたないかもしれない
だが、そこはいくらか見晴らしがいいだろう、
窓があるかもしれないし、高台にあるかもしれないから
嵐が来ては去り、嵐が来ては去る、
嵐ばかりの人生かもしれないから、
さまざまな嵐のすべてをおもしろがれるようになれたら!
人生をどこまで愛せるようになるか、
世界をどこまで愛せるようになるか、
それを試しつづけるのも悪くないんじゃないか?
死に急いだきみへ、わたしへ
死に急ぐあなたへ、みんなへ

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# by ototogengo | 2018-05-13 11:28 | | Comments(0)

詩 48

5月8~9日に書いた三作。


「雨」

雨、雨、雨、
室内に響く音、
連続してはじける雫たち、
それを聞いていると、
心が遠のき、
体が透明になる、
連続してはじける雫たち、
その感触、
体のあちこちに、
波紋があらわれてはきえ、
ひろがってはゆがみ、
あらわれてはきえ、
ゆがんではひろがり、
雨、雨、雨、



「閉じられた生」

わたしたちは誰にでもできることに殺され、殺され続けて、
誰にもできないことができなくなる
名前を奪われ、人生を奪われて、誰でもない者にされる
――そう、誰でもある者に
そのような生き方が正しいのなら、正しくなくてもいい
そのような生き方が幸せであれば、幸せでなくてもいい
わたしたちは十全にはわかりあえない体と心をもって生まれてきた
一人ひとりが閉じられた存在として生まれてきた
――それは生物と非生物をわける特徴の一つ
なぜ、それを無理やりにこじ開けなければならない?
死がおとずれるとき、誰もが自ずと開かれるだろうのに



「めざめ」

疲れもなく澄みきって
わたしたちはあふれかえるわたしたちを
もてあませ、もてあませよ

選べる行動がいくつもあることのしあわせ
息をすってはくことさえもうれしいような
水のしずくがふくらんでおちる様子を見て感じいるような
この自由、この透明な余白とともに生きたい

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# by ototogengo | 2018-05-09 17:57 | | Comments(0)

詩 47

5月5~7日に書いた三作。


「流体たち」

透きとおった鉱物たちが乱舞する、
金銀銅の光線や細ぎれの虹をまき散らして
恒星の前を雲が通るたびに、
影がそれらをかき消す
そのとき、光線と細ぎれの虹はどこへいく?
そのとき、それらは心のなかへうつる
恒星の前を雲が通りすぎる、通りすぎる
光線と虹が消え、現れ、消え、現れると同時に、
心のなかで現れ、消え、現れ、消える

本当のところは、それほどまで単純ではない
本当のところは、それほどまで明確ではない
現象と心象は複雑に呼応しあってうつろう
どこが現象で、どこが心象? それすらも不明
加えて、空間と時間がからみあう万華鏡、
透きとおった鉱物たち、金銀銅の光線たち、細切れの虹たち、雲たち、影たち、
わたしたちの憧れ、わたしたちの痛み、わたしたちの微睡(まどろ)み、
音のない交響楽にあわせて踊れ、踊れ、踊れ、



「ある種の幻は現実を超えて」

足もとの石たちには百数十億年の物語がある
道ばたの草たちにも百数十億年の物語がある
まわりの空気にさえ百数十億年の物語がある
永遠に記されない物語、永遠に知られないものたちの途方もない膨大さ
どのような歴史的事件も格別ではなく、どのような瞬間も一度限りだ

時間とは幻、わたしにとっての現在、あなたにとっての現在、この石にとっての現在、その草にとっての現在、あの星にとっての現在、それらはことごとく違う
そのすべてを包みこむ宇宙大の――それ以上の?――時間は生命体のように緻密で複雑だ
誰がそれをしっかりと捉えられるだろう?



「しろん」

詩を書くことは考えたことの再現のみで終わらない
詩を書くことは感じたことの再現のみで終わらない

ことばの重さを、強さを、動きをはかる
その響きを、匂いを、味を、感触をはかる
はかりながら橋を架け、はかりながら行き来する
世界を探索し、世界に探索される

ことばとともに未踏の領域へおもむこう
       未知の領域をひらくんだ

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# by ototogengo | 2018-05-07 23:10 | | Comments(0)