中島弘貴
by ototogengo


カテゴリ:詩( 100 )

詩 100

9月9~12日に書いた三作。


「たより」

闇のなかを降りそそぐ雨 震えながら 光りながら
草木の葉っぱたちが揺れる
その裏側で雨宿りする虫たちも濡れる
ああ きみたちは どんな気持ちでいるの
今 このときにも 宇宙空間は静まりかえっている

そちらは晴れていますか
一方で そちらは雪降りですか
他方で そちらは虹が架かっていますか
ああ オーロラが踊っているのですね
今 このときにも 宇宙空間は……

こちらは雨粒と雨音でいっぱいです!
目を閉じれば たくさんの波紋が
闇のなかの水面に 広がっては消えてゆく
飛沫を散らして 干渉しあって いろんな落ち葉も浮かんで
さあ 虫たちもおいで 溺れないように気をつけて
今 このときにも 宇宙空間は……

遠くにいる あなたたち
目を閉じれば この景色が見えますか
どうか そちらも美しい便りをください



「光」

なんという苦しみ 「したこと」と「しなかったこと」が
運命を囲いこんで 「できたこと」と「できなかったこと」が
このようになるとは「想像できなかった」 そうだ 絶対に

無知が原罪であるなら どうして罰されなければならない
初めから 罰されると決まっているようなものではないか
生きとし生けるものは罪と罰とともに生まれ 共に暮らし 死んでいく

やるせのない怒りをかかえて 生きていたくはないのです
不条理に思えてならないのは わたしたちの条理に合わせて
この世界がつくられているわけではないからでしょう

受苦 受苦 じゅく じゅく 受苦 じゅく じゅく
わたしたちは怒りに囚われず 別の何かをするべきだ
困難な生によって光を放射し その無数の光線によって紡ぐ

美しいことを諦めはしない そうだ 絶対に!
たとえ 美しさが生存そのものに必要ではないとしても
豊かな生存のためには どうしても必要だ それこそが光!



「波たち、命たち」

夜のなか 寄せては返す月光
そのまろやかな光のやさしさ
波頭が砕ける 木々の枝先で 山の出っ張りで
それによって 波紋ができて 小波が生まれて
寄せては返す月光は 精妙な模様でおおわれる

ああ 風がふく
月光は さらに複雑な移ろいを繰り広げ
そのなかを 風に散らされた 花や葉や種がたゆたう
あの流れる雲たちと同じく まろやかな光に縁どられて 彩られて
時に 鳥たちが黒い影となり 光の点や線となりながら それらを咥え去る

波が返していく 返していく
月は水平線の近くで楕円に膨らんで 薄紅色に変わっていく
紺色の海の波に 桃色の光の道が淡く重なる
いくつもの波やうねりが 幾層にもなって
さらに あちらから朝陽が昇りはじめる ああ 

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by ototogengo | 2018-09-14 23:09 | | Comments(0)

詩 99

9月8日に書いた三作。


「物語」

たくさんの指紋がこびりついた 透明な扉
風雨に繰り返し痛めつけられた 木製の扉
もはや開閉することもできない 錆びた扉
鬱蒼とした蔓植物におおわれて 隠れた扉
その扉たちはそれぞれに物語る 多声的に
個々の扉として 扉という道具全体として
粒子の集合として 多層構造をもつ歴史を
最も長い歴史は 宇宙の始まりからの物語

科学によってしか辿れない物語もあれば
芸術によってしか辿れない物語もある
推理よ 想像よ 実践よ 三位一体
となって 欠損を補え 満たした
あともなお 溢れるかえるほど
に ああ これほどまでに ああ 果てしなく豊かに!



「てんてん」

からだのなかの宇宙で 星ぼしが光り
星雲たちが流れる 生まれては死にながら
その下には湖があり 外界を映す 風が吹いて 波がたって
その水の底に降りつもる 景色や幻影たちは 結晶して 天に落ちて

その間にも からだは食べずにはいられない 眠らずにはいられない
なかなか寝つかれないときには 転々としながら 夢想して

さようなら きみたち はじめまして あなたたち
みんな混じりあって 星ぼしになる 星雲になる 彩られて 輝いて



「無」

空間のなかにあるものは見えるが 空間そのものは見えない
時間のなかにあることは知れるが 時間そのものは知れない
ましてや 時間も空間もない無を どのように捉えればいい?
それでも 無には何かがある 世界がこのようであるために

ああ 全く同じ小さな単位でできた あらゆるもの
なぜ それが鉱石や魚や虫 水や菌や人に変わるの? 組み合わせによって?
なぜ その組み合わせごとに性質が決まっているの? 何のために?
わたしたちの認識には 超えられない地平線がある たとえば ビッグバン
それ以前に何があったのかは 誰にもわかりえない

無と無限は似ているが 少なくとも 無限に「限りがない」
ことは確かだ 無については「限りがない」かさえもわから
ない 宝石や鳥や草 火や藻や猿 まずは それらから無限
に近づくことだ そうすれば 無にも近づける? それとも

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by ototogengo | 2018-09-10 23:36 | | Comments(0)

詩 98

9月4~7日に書いた三作。


「拡張」

水たちは歌う
石たちは歌う
虫たちは歌う
山たちは歌う
星ぼしも歌う
それぞれに違う歌を
合わせて一つの歌を
それぞれの声を聞き
そのことばを読んで
別のことばへと至る
ああ 歌に合わせて踊ろう
かけがえのない一度限りの
そのたびに全ての歌たちが
全てのことばたちが変わる
永遠に踊りきれないだろう
樹々に合わせて きみに合わせて
日々に合わせて 千々に合わせて
美しく変幻する世界を身にまとう

※千々(ちぢ)



「浮沈」

夜の重さは わたしたちの内から発する
その暗さと静けさは死に似ているだろう
いや 生に終わりがあるという実感にか
わたしたちは抗う そして 沈黙を破る

そう 現在も地球のどこかの砂浜は真昼
そこでは 波が輝きながら寄せては返し
色々な巻貝や二枚貝や角貝やその貝殻が
打ちあげられたり沈んだりを繰り返して

夜の重さは 宇宙のすみずみから発する
その暗さと静けさは死以前のものだろう
というよりは 死を超えたものだろうか
わたしたちは眠る そして 沈黙に還る

闇のなかで 色々な貝殻だけが浮遊する
輝いて 百色の光の欠片を無数に放って
それらはいくつもの軌道に沿って渦巻く
やがては銀河や星雲になって星々を生む

※現在(いま)、百色(ひゃくいろ)



「みちみちて」

幾億もの 幾兆もの 蛇行たち
分かれたり 合わさったり 途絶えたりする 道たち
曲がりくねったり とぐろを巻いたり まっすぐに伸びたりする
ああ 微細な鱗が 多彩な宝石を散りばめたように きらめいて
組みあわさって巨樹となって それに生る実を蛇行たちが食べる
産めよ 殖えよ みちみちて みちにならえ 陸海空の命と共に

揺りかごに ゆられながら 棺桶に ゆられながら
模様たちが 時間たちが 不可視の波たちが 語る
宇宙の卵は いくつある?
この宇宙の外に そして わたしたち一人一人の内に
宇宙がどれほど殖えるかは わたしたちの関係と孤独とに かかっている

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by ototogengo | 2018-09-08 12:57 | | Comments(0)

詩 97

9月1~3日に書いた三作。


「当然とは」

たとえば 雨や風や雪という現象のすさまじさ
たとえば あなたや私という現象のすさまじさ
     空も土も海も 虫も草も魚も そう
すべては 当然だが まったく 当然ではない

水たまりに波紋が いくつもいくつも広がっては消えていく その交わり 線と面 光と影 ゆらめいては ひらめいて

当然を手がかりにして 当然を破壊せよ 当然ではないを手がかりにして 当然を構築せよ

私は私 私は私ではない 私はあなた
雨は海 死は死ではない あなたは空 みんなは空



「昇降」

わたしは透明になり不透明になりを繰りかえす
不透明に変わるとき 稲妻のようにヒビが走る
全身は濁る 紅く美しい亀裂が駆け巡ることで

ああ 堕ちながら 青空につつまれていく
雲を通りすぎたあとは きらめく六花たちで覆われて
それがやがて わたしのヒビを綺麗に癒す
体のなかは大雨 心のなかは大雨
そこらじゅうには 水たまりの地図ができる
眼下には 海のなかに浮かぶ陸地の数々が見える

わたしは自分になり全世界になりを繰りかえす
全世界に変わるとき 葉脈のようにミチが走る



「距離」

世界が わたしたちを魅了する また
    わたしたちをうんざりさせる
もしかすると それらの元は全く同じ
問題の一つは距離にあるのではないか
ある程度遠いと魅了され ある程度近いとうんざりさせる
どちらの状態も愛せてこそ 世界を愛していることになる?
問題の一つは時間にあるのではないか
ある程度短いと魅了され ある程度長いとうんざりさせる

たとえば 知性と感性と想像力により 距離と時間を操る
相対化せよ かつ 絶対化せよ そう
わたしたちは あらゆる距離と あらゆる時間に遍在して
それでいてなお 今 ここに存在して!
世界は満ち満ちる 際限なく それでも 本当の世界には 遠すぎる!

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by ototogengo | 2018-09-03 19:15 | | Comments(0)

詩 96

8月28~9月1日に書いた三作。


「呼応」

目覚めていよ
世界の遥かさを感じているために
世界の遥かさを より遥かにして

その波を見よ
その模様と音楽とに心を澄ませて
その性質と歴史とに考えを馳せて

(海 光 空気 すべての波は単純ではない
 大きな波のうえを小さな波が覆いつくして
 さらに いくつもの波が干渉しあっている)

複雑さを知れ
近づけば近づくほど遠ざかる美を
わたしたちを永久に魅了する万象

(どうか 目覚めさせて
 意味や結果に囚われず
 透明な驚きで満たされて)



「世界」

あなたがたはどうぞ 外界を分断されるとよい
ものとものを 自分と他者を分断されるとよい

切り刻まれた世界に閉じ込められた あなたがた
伝えるつもりのない 解き放つつもりのない言葉
それによって わたしは震えない
何となくの共鳴など 取るに足らない
直にふれるように 硬く歌えよ
広く爆ぜるように 展開せよ

わたしたちは心と心を澄ましあわなければならない
詩人は言葉と対するだけでなく 他者とも外界とも対しなければ
複数になって やがて 無数になるまで
よりあわせた糸で それぞれをむすび
やがて 多次元の織物が あらわれるまで
そのとき すべての糸が輝く 



「問答」

ああ 何ものが決めたのだろう
小さな粒の数や組み合わせによって
それらの集合体が全く異なる性質をもつことを
ああ これほどまでに広い空間と永い時間にわたり 同じ法則にしたがって

(この宇宙では 空間と時間と温度が一緒になって動く)

いかにも単純な法則が いかにも複雑な世界を織りあげる その美しさ

(美しいのは単純? 複雑? その両方? それとも その融合?)

きみやあなたと これらのことを語り合いたいのです 答えに近づくために 問いと答えを増やすために

(あなたたちならではの 問いと答えをくれませんか? 「そのようなことをしても 何の役にもたたない」と言われるけれど わたしたちの心が豊かになる というだけでも すばらしく役にたつ しかも 他の何ものをも おびやかさずに)

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by ototogengo | 2018-09-01 03:44 | | Comments(0)

詩 95

8月25~28日に書いた三作。


「流れたち」

外へ向かって 同時に 内へ向かって 気化していく人びと
そう 物質は個と全の間を旅する
人もまた全へ向かって 絶えず流れようとするから
生と死を飲み食いして 流れに抗わねばならない それが生きるということ
その流れは強く 大きすぎるから 遡ることはできない
他の流れたちを見出だせ! 一方通行でない その流れたちを操れ
とどまらせよ 沸騰させよ 透きとおった水たまりや きらめく結晶を生じさせよ

わたしは今日も生きものを食べた
それを生きものではない 儚いものに変えた
それを精錬して 金や銀の原石にして 樹の形に育てあげて
いくつもの 種類の異なる船を切り出して 現の河に 夢の海に 知の空に 放つ
舟はそれらのなかを進みながら つぶつぶひかる卵の数々や
くるくるまわる種子の数々や きらきらうかぶ胞子の数々に 解体し 拡散する
すべてが気化しない 今のうちにしかできないこと

※遡(さかのぼ)る 



「意」

意味を着るときは
意味に着られるときでもある
意味を知らなくても
意味に着られてしまうのだから
意味を知っておいてもいいでしょう
意味がないことさえも 意味とならずにはいられないのだから
意味の海原 このたくさんの人びとが暮らすなかを
意志をもって渡るために この混沌のなかを



「循環」

穢れることを許せば 苦痛はなくなる
だけど 穢れに同化してしまってもいいのですか
それを許さなければ 穢れに染めぬかれることはない
そうだ その苦痛は清い 抗いの証

できるだけ 穢れに近づかないようにしましょう
だとしても 穢れはそこらじゅうにあるから その全てを避けられない
うつくしさ それは脆いもの 傷ついたなら 治癒しなければならない
めぐらせて 別のうつくしいものによる浄化 癒える過程は一つの強化

癒えようとする傷口から放たれたのは 白熱する波のうねり
数多の傷跡もまた 眩い波を再び放つ 光る波たちが一挙に
迸って 緻密で壮大な 鳥の羽のような模様を描きつづける
わたしたちという透明な鉱石のなかに その優美な翼の数々が定着する
次に浄化がおきるとき それらの翼は時空を超えて 羽ばたくだろう
そう 信じがたいほど みごとに!
聴こえますか 見えますか 感じますか
すでに 翼のそれぞれが鼓動をうっている

※穢(けが)れ、眩(まばゆ)い

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by ototogengo | 2018-08-28 01:51 | | Comments(0)

詩 94

8月23~25日に書いた三作。


「そうたい」

時間が人生を絶えまなく刈りとる
それが恐ろしくて 過去にしがみつく
すると 現在までもが刈りとられてしまう
されるがままにせよ その苦しみをいだきつつ
そうだ 受難につぐ受難が 内なる聖堂を築くまで

現実の暴力から逃れることを諦めなければならない
だが 痛みを感じつづけることを諦めはしない
傷の一つ一つが光線を放ち 光点を蒔いて
多層的な歌を語り 切実な物語を歌う
それらの美しさが破滅を先伸ばす

わたしたちは創らざるを

えないのだった



「かみをよむ」

こんとんを かみのなかに とじこめたなら
そのかみを よみとくとき てんかいされる
こんとんは はじめよりも たようになった
そのかみに つめこまれて おりたたまれた
こんとんは よみとけない なぞをふくんで
そのかみの げんどをこえて せかいになる



「同じ世界で」

嵐の去った黄昏時 白い雲と黒い雲 そして 青空がまじわって 光も模様も絶え間なく移ろう その美しさ 影は長く伸びて 現れたり消えたりをくり返しながら薄まる 深まる空気の青よ 星が輝きはじめるなか 山のうえには 赤や橙や桃や紫が 今もなお寄せては返す

わたしたちは暮らす 嵐も黄昏もなく ただ灰色のままに 朽ちていく ごく稀に 鮮やかに瞬きながら そのあいだに どこかで大殺戮がおこる! そこでもここでも 同時におこる! そのうちのいくらかは わたしたち自身が殺した ああ わたしたちも殺されつづけて

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by ototogengo | 2018-08-25 01:07 | | Comments(0)

詩 93

8月20~22日に書いた三作。


「わたしたちの」

全身から綿毛がびっしりと生える
それらの根元には種がついている
心の働きで各々の綿毛は結晶化し
透明になって 淡い多彩を放って
次々と飛びたつ! 時空間を超え
その時々で軽くもなり重くもなり
風に乗り 時に乗り 気持ちに乗って
ことばに乗り 血に乗り 光に乗って
漂い 走り 浮かび 沈み 根づき
歌になって あるいは 化石になって

宇宙線のように わたしたちを貫く綿毛たち
天も地も上からも下からも 斜めからも横からも貫いて
しかし そのどこかで種が芽吹く
生えるのは草木? 魚? 夢? 星?
     鳥? 山? 幻? 物語?
それぞれが結ばれて踊る その果てしのない生態系!



「内部空間 外部空間」

ただ一つの正解をだすために生きているのではない
正解をふやし それを無数に近づけること そうでなければ
人生はなんて つまらないのだろう ああ
生き物の数と同じくらい 生き方があるのでなければ
思いきり 深呼吸できない 満たされた心もちで
素粒子の数と同じくらい 道すじがあるのでなければ

わたしたちは飛ぶ 満天の星空まで上昇して(下降して)
まるで 多種多様の宝石が散らばる闇のなかをただよう
金剛石 柘榴石 天青石 金緑石 瑪瑙に紫石英に黄玉
果てしない静寂の空間を泳ぐ 星ぼしは近いようで遠い
わたしたちもまたそれぞれに 例外なく近いようで遠い

数限りない道を通った末に巡りあえたなら

※天青石(てんせいせき)、紫石英(しせきえい)



「自由」

生まれたときから罰されつづけ
生まれたときから恵まれつづけた
それらを天秤にかけられるほど わたしたちは知っていない
どちらも あまりにも あたりまえすぎて
だけど それらは自動的に数えられ 計られている
他のものたちが計られ 数えられて 感情が生成されるように
それらは幸と不幸を精製する

知性よ もしも存在するのなら 罰と恵みを精査しなさい
操作しなさい 対象も自分自身も
知性よ 目に見えないものをつかみ 耳に聞こえないものをとらえ 物体のようにあつかいなさい 
多様な光を照射せよ! 過剰な痛みも透過せよ! 結晶化した意志で すべてをやわらかくつつみこめ
自由!

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by ototogengo | 2018-08-23 23:24 | | Comments(0)

詩 92

8月17~20日に書いた三作。


「世界」

風 ゆらして ふるわせて はためかせて うずまかせて なみだたせて ああ 涙だ

風 ささやかせて うならせて ほえさせて さけばせて かたらせて そうか 歌だ

何かに呼ばれて別の何かが応える 風も 涙も 歌も すべては呼応で すべてが問答



「一体」

過ちを認めなければならない
過ちを正さなければならない
それらを実行できなくても 罪にはならない
だが 罰は執行される そう 磔にされるのだ

常に認めなければならない?
常に進まなければならない?
それもまた 罰の執行 そう 全ては罰される

罰を認識し 分類する
そのうえで わたしたちはどの罰を選ぶ? どの恵みを選ぶ?



「原動」

世界のすばらしさには永遠に追いつけない
せめて それに近づけるよう 豊かになれ
あらゆるものの中心に虚しさがある
あらゆるものの果てに虚しさが
たぶん それらの虚しさは満ちすぎているせい
同時に こちらがあまりにも 貧しすぎるせい

世界は巨大で 我々は矮小
だから 我々は満たされてはならない
せめて 虚しさの力学により 豊かになれ!

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by ototogengo | 2018-08-20 02:09 | | Comments(0)

詩 91

8月15~17日に書いた三作。


「やぶれた反復」

びっしりと結露したガラスのコップのなかで
溶けてすべった氷たちが からんと鳴ったよ
激しく踊りつづけて熱をおびた空気のなかで
昼が長びくように傾いた この惑星のなかで
渦を巻いた星の河の中心から外れたところで
宙に浮かぶ泡が孕む 無数の煌めきの一つで
その巨大な泡は結露したコップのなかにある
水に浮かぶ氷のなかにある 気泡と同じなのかな



「虚実」

欠片を失いつづけた
ああ どこへ行ったのですか
もう 二度と拾えない
失いつづけながら得た
悲しみながら 見えないものたちを捏ねあげ 建てる

むしろ 内にも外にも 穴を増やし 広げ
わたしたちは喪失を得る
見えないものたちを選んで
祈りと一体になった 捏ねるをする 建てるをする
失いつづけないかぎり 二度と得られなかった

地上に透明な樹を建てる
夜闇に影の大河を建てる
内面に風の結晶を建てる
虚空に具体の夢を建てる
それらすべてを無数の橋でつなぐ



「死と再生」

わたしたちの精神の豊かさは わたしたちにとって 今現在の 世界の豊かさそのもの どうして それを破壊するものどもを許さねばならない? どうして それに加担せねばならない? 気が遠くなるほど くり返し くり返し 殺されながら

混沌の黒や白と 単純な黒や白は まったく違う 混沌は真珠のように 無限の色を移ろわせて わたしたちは その光を取りだして遊ぶ 光をめぐらせる その命を育むように 光と闇そのものになって 光と闇をつつむ空間になって 生きるのだ

わたしたちは単数 わたしたちは無数 虹のように 幻にして現(うつつ)
それでも 確かに触れている!

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by ototogengo | 2018-08-18 00:31 | | Comments(0)